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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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緊張の日々 2

続きです!

黎翔に『本物の妃に』と言われ、夕鈴は居留守を使う。
それに、黎翔は―――?

―――――――――――――――――――――――





後宮。妃の部屋。
夕鈴は瑤花さんと一緒にお茶を飲みながら、悶々としていた。

昼間、陛下は後宮に来なかった。
まあ、私もいつもの四阿には行かなかったんだけど。
朝は会わなくてほっとしたものの、昼間黎翔が来たという知らせが無かった事で、存外夕鈴は落ち込んでいた。

―――やっぱり、朝食の時避けたのはまずかったかしら…いやでも、あの時はどうしても会える様な心境じゃなかったし。というか、今でもそうだし。

夕鈴は未だ考えていた。
陛下の言葉の意味を。

『本物になって』

それは、夕鈴にとって現実味のない言葉。
いつか現代からこの白陽国に来ない日が来るだろうと思っていた私には、無縁の言葉。
というより、そんな言葉を言われるとは夢にも思っていなかったのに。
―――どうすればいいの?

昨日の晩からずっと夕鈴は頭を悩ませていた。
すると、向かい側に座っていた瑤花さんが話しかけてくる。

「―――夕鈴様。何をそんなに悩んでおいでですか?昨日の湯殿の時は、そんな感じではありませんでしたよね。」
「…え…と…」

言葉を詰まらせる。
瑤花さんは知っている。
私が臨時花嫁だということも。
未来の人間だという事も。
逡巡したものの、年上の人の意見が聞けると思った夕鈴は、正直に話した。
陛下に求婚…紛いの事を言われた事。
断ったものの、陛下が聞き分けてくれないこと。
どうしたら良いのかと悩んだ末、陛下を避けてしまったこと。
陛下に求婚紛いの事を言われた、と言った辺りで瑤花さんの顔がぱあっ…と輝いた気がしたものの、断ったと言ったところで驚いた顔をされた。

「―――断ったのですか?国王陛下の求婚を?」
「いや…あれが求婚だったのかも今一つ…実感が無いのだけれど。でも本物って…そう言う事に…なるのかしら?…あれ?それとも私の勘違い?実は何か別の意味があるのかしら…?」

一晩経って、色々考えて、考えて、考えているうちに、あれは夢だったのではないかとか、本当は別の意味があったのではないか、と現実逃避をし始めた夕鈴に、瑤花はすぐに訂正をする。

「いえ…夕鈴様。『本物の妃』に他の意味は無いことと思いますが…。」
「そ、そうよね、ですよね…。…はぁ………――陛下は一体何を考えているのかしら…」

瑤花は戸惑った。
恐らく陛下は本気で求婚したのだろう。
しかし、当の本人に今一伝わっていない。
いや、言葉自体は伝わっている気もするのだが、陛下のお気持ちが伝わっていないというか…

「私は未来の人間で、違う世界に住んでいて、そもそも臨時なのに…」
「陛下とご結婚されれば、そのようなことも関係ないのではありませんか?」
「―――――――――え…?」

夕鈴は一瞬何を言われたのか分からなかった。
陛下とご結婚されれば…
陛下と結婚…
けっこん…ケッコン………―――結婚っ!?
誰と誰がっ?!
―――私と陛下がっ!?
有り得ないっ!!!
夕鈴はすぐさま否定した。
思考が考える事を拒否した。

―――結婚っ!?私と陛下がっ?!!そんなの有り得ない!
だって、人生17年生きていて、まだ誰にも告白すらされた事無いのに、いきなりされた事が求婚で、結婚の申し込みで、相手が国王陛下だなんてっ!
誰か夢だと言って!!!

夕鈴は黎翔から『本物の妃に』と言われた事を、深くは考えていなかった。
最初から選択肢の一つに入っていなかったからだ。
本物の妃=結婚するという図式が成立していなかったのだ。

夕鈴は顔を赤らめるよりも先に青ざめて、それ以上考える事を拒否した。
「は、はは…はははは…」と顔を引き攣らせて乾いた笑い声を出しながら、とりあえずお茶を飲むことにした。
瑤花はそんな夕鈴の状態を見て、それ以上何も言う事が出来なかった。


***********************

それからというもの、夕鈴はというと――――
避ける。
避けまくる。
黎翔の訪いを。
朝は体調不良を使い、昼は四阿に足を運ばず、夜は早めに寝る。
見かねた瑤花に「それではあまり宜しくないのでは…」と諫められたが、変に意識してしまった夕鈴は、とてもではないが黎翔に会う気にはなれなかった。
偶に黎翔が不意打ちで妃の部屋に入ると、侍女から知らせを受けた夕鈴が寝台に飛び込み、不貞寝を決め込む。
それにはさすがの黎翔も諦め、溜息を吐いて妃部屋を去る…そんな日々が続いた。

黎翔はと言うと。
政務室で更なる冷気を放出させていた。
極寒の冷気に晒され続けた政務室の官吏たちは次々と倒れ、側近の李順も少し蒼褪めてきていた。
何度か黎翔を諫めたものの、不機嫌さを隠さずに書簡を捌き続ける。
これでは早晩、政務室から官吏がいなくなる。
そんなことを危惧する李順だった。



それが5日程続いたある日の夜。
後宮の妃部屋。
夕鈴はこの日もさっさと寝台に横になり、でも寝付けずにいた。
毎晩毎晩、同じことの繰り返し。
夕餉を摂って湯殿に入ったら、真っ先に寝台に飛び込むのである。
いつもなら黎翔の訪れを待ち、少し話をしたり棍の特訓をしたり、碁や双六で時間をつぶしたりする時間も、この5日間は全くと言っていいほど無い。
いつも起きている時間に寝ているので、そんなにすぐには寝られない。
何度も何度も寝返りを打って、やっとの事で眠りに就く。
そんな日々が続いた。
でも、その日だけは違った。
ある時、寝返りを打った夕鈴は、寝台のすぐそこに立つ人影に驚いて悲鳴を上げそうになった。

「――――ひっ……っ……むぐ…」
「―――すまない、驚かせたか。…でも、悲鳴は上げないでくれ。」

そこに居たのは、陛下だった。
悲鳴を上げそうになった夕鈴の口を手で塞ぎ、黎翔は寝台に乗り込んできた。
その状況に気づいた夕鈴は黎翔の手を振り払い、掛け布を抱きしめて寝台の端に逃げる。

「な…な…」

夜の自分の寝室。
寝台の上。
そこに座る、男と女。
この状況が、あまり宜しくない事は、夕鈴にだって分かる。
出来るだけ端っこに逃げるものの、すぐに壁にぶつかる。
目の前には、この間自分に求婚した(と思われる)男性。
その人が、寝ている私の寝台に乗り込む。
明らかに危機的状況である。
夕鈴は必死に距離を取ろうとする。
しかし、黎翔は真剣な顔で夕鈴に近づく。

あまりにも不意打ち的状況だったため、反撃の一手すら考えられず逃げる夕鈴に、黎翔は優しい声で話しかけた。

「…怯えないで。君に何かするわけじゃないから。」

黎翔は夕鈴の頭にぽんと手を置いた。
殊更優しく、慈しむように。
そのことに明らかにほっとした夕鈴。
寝台の上に二人きりという状況は変わっていないのだが。
黎翔は苦笑しつつも、逃げられない事に少し安心した。

「―――君に『本物の妃になって』って僕が言ったから、君がとても驚いたのは想像がつく。…でも、こうやって毎日避けられるのは…辛い。」
「あ…。すみません…。」

夕鈴は心の動揺から一変、黎翔の優しい手に安心した。
それまで心臓がどきどきしていただけに、その優しい手つきに緊張が解けた。
そして黎翔から言われた言葉に、素直に謝った。
やっぱり避けていたのは気が付いていたらしい。
そうだろう。
あそこまであからさまに避け続けていれば誰だって気づくだろう。

夕鈴は改めて自分の行動を反省した。
いくら動揺していたとはいえ、自分はちゃんと雇われて『臨時花嫁』をやっているのに、これでは仕事を全うしているとは言えない。

「―――こんな夜に突然来ちゃってごめんね。びっくりしたでしょ?」
「あ…それは……確かに驚きましたが。でも、私も悪かったんです。臨時花嫁として雇われてるのに、避け続けちゃって…ごめんなさい。」

夕鈴はしゅん…と頭を垂れた。
陛下はこの国の王様なのに、こんなことさせてしまう様な行動をとってしまった自分を反省した。

「それはさっきも言ったように、僕が避けさせるような事を言った事にあるから、夕鈴は謝らなくて良いよ。」
「でも…」
「それより、これで仲直り。ね?明日の朝になったら、いつものように一緒に朝餉を摂ってほしい。政務室にも来てほしいし、昼餉も食べたいし、夜も君と一緒に過ごしたい。」
「あ…はい、いつも通りにですね。分かりました。」

別に喧嘩をしていたわけではないが、その辺を掘り返すこともないだろう。
要は、いつも通りに振舞ってほしいとの陛下の言葉に、夕鈴は頷いた。
本人達の心境はどうあれ、周りから見れば自分たちはすでに夫婦なのだから。
それらしく行動しなくては。

「―――じゃあ、僕もう行くね。お休み、夕鈴。」
「あ、はい、お休みなさい、陛下…。」

夕鈴は拍子抜けしたように声を出した。
それだけを伝えるためにわざわざ足を運んだと知り、改めて申し訳ない気持ちになった。
突然現れたことは心臓に悪かったけど、でも陛下から直接気持ちを聞けた事でいくらか落ち着いた。
黎翔の後ろ姿を見送ると、再び寝台に入る。
―――とりあえず『本物の妃』問題は棚上げっ!いつも通りに振舞うのよ、夕鈴!
夕鈴は拳を握り、気合いを入れ直した。
―――自分がどうして避け続けていたのかを忘れて。


***********************

黎翔は自室へと繋がる後宮の回廊を歩く。
そして先ほど夕鈴に言った言葉を反芻する。

『…怯えないで。君に何かするわけじゃないから。』

あれは本当だ。
ただ…「今すぐ」という言葉を入れなかっただけで。

黎翔はほくそ笑む。
夕鈴はそういう方面にはとても鈍い。
私の思惑には、少しも気付いていないのであろう。

夕鈴を、本物の妃に。
それが私の願い。
僕の願い。
そのためには、まずは色々と準備を進めないとな。

黎翔は歩きながら、今後の算段を考え続けた。


――――――――――――――――――――――――――

…陛下が…はぁ…面倒くさい(あ、本音が)

夕鈴は、ここで陛下への警戒解いちゃいました。
危ないよ~…(小声)

ちなみに夕鈴さん。
陛下に求婚された事が現実だとちゃんと認識出来ていません(笑)
事あるごとに「求婚(だと思われる)」←括弧がwww

頑張れ!陛下!←他人事



次回予告↓


黎翔を避けていた夕鈴。
浩大と話している時、「ある事」に気づき―――――?

次回「束の間の
お楽しみに!

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