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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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束の間の 2

続きです♪

浩大とのやり取りで、自分が妃であり続けることに疑問を感じた夕鈴は―――?

――――――――――――――――――――――――


夜の後宮、妃の部屋。
夕鈴は陛下と仲直り(喧嘩してたわけではないが)した翌日、数日前に立ち入り禁止区域で浩大と老師と話したことを思い出した。


「―――あの…陛下?」
「ん?何?」
「突然こう言うのもなんですが…―――私…後宮にいなくても良いのではないかと思いまして…」
「!!?」

黎翔は目を瞠った。
何故、そんなことを夕鈴は言い出したんだ?
昨日、夕鈴は納得したんじゃなかったのか?
それとも、一晩寝たことで気が変わったとか?
黎翔の表情を見ていないのか、夕鈴はそのまま続けた。

「この間、私は下町から現代に帰りました。…ということは、別に後宮に滞在する必要はないということですよね?いつまでも陛下や李順さんのお世話になるわけにもいきませんし…いっそ、ここらで下町に行った方が…」
「ダメっ!!駄目だよ、夕鈴!」
「え……どうしてですか?」

私がここに居る原因に、後宮でしか現代と行き来出来ないと思ったことがある。
それがこうして下町でも可能と判明したからには、後宮に滞在する必要はないのでは。
そう言う考えに至ったのは、ついこの間浩大と話してからだ。
私が居る事で、妃衣装とかその他諸々、経費がかかるだろう。
財政難って言ってたし。
それならいっそ下町で働いた方が、と思ったのだ。
なのに、陛下は何で「ダメ」なんて言うんだろう?

「――――――ゆーりん、僕が嫌いなの?」
「…へっ?何でそーなるんですかっ?」

どうしてそう言う発想になるのだろう?
私が陛下を嫌いなんて…そんなこと有るはず無いのに。

「だって…ゆうりん後宮から出るって言うし…。」
「それは…」

正直、私じゃ力不足だと思う。
この時代に疎いし、甘い演技の陛下にはいつまでも慣れないし。
他に適任者がいると思う。
例えば、演技の上手い人とか。
例えば、陛下に釣り合う様な女性とか。
それは………………私じゃない。
この間の李順さんの言葉が私の胸に突き刺さる。

『貴女はあくまで陛下の臨時花嫁。いつか然るべき御令嬢を迎えるまでの役目と言う事を忘れないでください。』

以前も同じ様な事を言われた事がある。
あの時は、特に何も思わなかったけど…どうして今はこんなに苦しいのかしら。
夕鈴は思わず胸をぎゅ…っと掴む。

「…陛下。私がこのまま花嫁を続ける必要はあるんですか…?」
「―――それはどういう意味だ?」

黎翔は自分の声が冷え切っていることを自覚した。
夕鈴は――――私から離れたいのか?
この間李順にも『潮時だ』と言われた。
―――もしや李順から何か言われたか?

「だって…もう随分長いこと陛下の花嫁をやっていますし…。陛下がいずれお嫁さんを貰うなら、もうそろそろこの役目も終えた方が良いんじゃ…」
「僕のお嫁さんは、夕鈴だよ。」
「いや…ですから、私は臨時で」
「夕鈴」

突然黎翔に手を取られ、夕鈴はびくりと震えた。
不意打ちだったのと、その声の冷たさに。

「―――――何故そのような事を言う?誰かに何かを言われたか。」
「いえ…単に私がそう思っただけで…」
「―――本当か?」
「だって…そうでしょう?最近は縁談のお話とか聞かないですし…。私が妃でも、度々現代に戻ってますし…。もっと役に立てる人を雇った方が、陛下の為には」

喋っている最中に、握られた手を持ち上げられる。
その指先に――――…陛下は口付けた。

「や、ちょっと、陛下っ」
「―――僕は君が良いよ。」

動揺して赤くなるものの、その黎翔の言葉に、真剣な眼差しに、夕鈴は息を呑む。
そして諭すように黎翔は言う。

「―――元々夕鈴が花嫁をやっていた理由は、縁談除けと、危険回避のためだよね。僕の縁談除けの為に、力になってはもらえない…?」

それはそうだ。
元々、私が臨時花嫁として雇われた理由は、後宮でしか行き来出来ないと思っていたこと、またすでに周囲には『妃』だと思われていたこと、それらから身を守るためには『妃』としていた方が守り易いこと、等があった。
別に妃じゃなくても…と言ったが、それは陛下によって却下された。
ついでに陛下に沢山降りかかる縁談の山を断り易くするために、私の『臨時花嫁』は決定した。
それでもこれまでの経験で、分かった事がある。

「…縁談除けの為なら、やっぱり他の人を雇った方が良くないですか?こんな、この国の事情に疎い私よりも、ちゃんとした人を雇うとか…。」

陛下の臨時花嫁として傍に居て、痛烈に理解した。
私では、ダメなのだと。
この時代に疎くて、演技も上手くなくて、全然妃らしくなれない、私では。
下町の方が、よっぽど自分に合っているかも知れない。

「僕は君が良いんだ。顔も知らない、親しくもない女性を雇うより、君と一緒の方が楽しい。その方が、僕の為なんだ。」

夕鈴が良い。
他はいらない。
名前も顔も知らない『王』の自分に媚びるだけの、女達は。
君が、君だけが。
『珀 黎翔』として接してくれる君だけが、僕を癒せる。

「―――…お邪魔じゃないですか?」
「そんなこと思ってないよ。」
「でも…」
「夕鈴は、僕の言うこと信じてくれないの?」

なのに、何で邪魔なんて思うのか。
どうして、自分の言葉を信用してくれないのか。
それに、夕鈴は忘れているようだけど、僕は君に求婚したんだよ。
あまりしつこく言うと、君はまた逃げてしまいそうだから言わないが。

「――――君は、もっと夫の言葉を信じるべきだな。愛しい妻と一緒に居て、邪魔だなんて思う夫がこの世界のどこに居ようか。」
「お…夫っ…?愛しいって…」

夕鈴は顔から火が出そうだ。
『夫』と『愛しい妻』という単語に反応して。
―――夕鈴とて忘れたわけではない。
考えようとしなかっただけで。
陛下が『本物に』と言ったことを。
でも、陛下はその話を蒸し返してこないし、以前ほどべたべた触らなくなった。
だから私も何も言わないけれど、そうやって『結婚』を意識する単語は止めて欲しい。
それでも――――

「傍に……居ても、良いんですか?」

―――良いのかな。
傍に居ても。
陛下の傍に。
結婚云々はどうしても頷けないけれど、傍には居たい。
居心地の良い、この後宮に。
温かい、その腕の中に。
――…せめて、陛下が妃を娶るまで。

「――僕は君が良い。」

重ねて、黎翔は言う。
例え、今はまだ届かなくても。
信じられなくても。
必ず―――手に入れてみせる。

一旦夕鈴から手を離して立ち上がり、長椅子に座る夕鈴から距離を取り、手を広げる。
おいで、と言うように。
それに夕鈴は戸惑いはしたものの、立ち上がる。
ちらちら視線を逸らしながらも、ゆっくり黎翔に近づく。
ゆっくり、一歩ずつ。
広げた腕の範囲に入っても、黎翔は抱き締めてこない。
それに少し安心した夕鈴は、黎翔の胸元に両手を付け、顔をその上に載せる。
まだ抱き締めない。
夕鈴が体重を預けると、やっと…というように黎翔は抱き締める。
優しく、柔らかく。
頭を撫で、髪を梳く。
その温かさに、夕鈴は次第に瞼が重くなってきた。



「―――夕鈴…?……眠ったのか……」

腕の中では、完全に体重を預けている『妻』が一人。
すやすやと、健やかな寝息を立てている。
黎翔は夕鈴を抱き上げた。
起こさないように、極力揺れを少なく注意して寝台に運ぶ。
夕鈴を寝台に載せ、掛布を掛ける。
そして黎翔も寝台に腰かける。
夕鈴の寝顔を見つめる。
時々むにゃむにゃ動いたり、「う~ん…」と唸っている。
見ていると黎翔もおかしくなってくる。
人の寝顔を見て笑う事など、これまで一度もなかった。
やっぱり、夕鈴は良いな。
瞼にかかった前髪を左右に分ける。
そうして出てきた夕鈴の額は、何だか美味しそうで。
ちゅっ…と口づける。
寝ている時だし……これ位は、良いよね?
心の中で自分に言い訳する。
そして寝台から離れ、部屋の入口に進む。

「―――お休み。」

そう短く言って、黎翔は去って行った。



―――束の間に起こった後宮での出来事も、夜の光だけが知っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――

以前よりべたべた触らなくなったからって…
やっぱりべたべた触ってると思うんですよね!へーか!
女の子の体に、許可なく触るものじゃないんですよ!←

この話。
最初はもっと明るめだったのですが…話の展開でこんなことに…アレ?


次回予告↓

黎翔との緊張状態もいくらか落ち着いた穏やかな日。
夕鈴は、黎翔に話していなかった「ある出来事」のことを思い出し――

次回「安息日
お楽しみに!

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