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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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安息日 2

続きです♪

黎翔との棍の練習が役に立ったと言う夕鈴。
しかし余計なことも言ってしまい――?


――――――――――――――――――――――――

黎翔は先ほどから徐々に苛つき始めていた。
夕鈴の言う幼馴染の彼。
彼と夕鈴の過去には、決して自分は入り込めない。
仲が悪い、という以前の夕鈴の言葉を鵜呑みにして安心…していた訳ではないが、少なくとも夕鈴は彼に好意を持っていないのだと安心していた。
しかし、今回の件でそれも怪しくなった。
一緒に闘うなんて、信頼していなければ出来ない。
信頼しているという事は、少なくともそれなりの好意はあるということだ。
終いには、浩大と練習している、との新たな情報まで入ってきた。
何だそれは、聞いていない。
浩大からは、何の報告もされてないぞ。
しかし夕鈴は何が黎翔を不機嫌にしたのか分からず、とりあえず話すことに決めたらしい。

「ええと…はい。立ち入り禁止区域での掃除の後、偶に浩大と武術の稽古をしていました…けど……それが…何かあったんですか…?」

これまでは武術のみであったが、今度から棍の練習もしようかと思っているのだが…何だか陛下の様子がおかしい。
練習をすることに、何か問題があるのだろうか。
でも、陛下とも練習しているのに?
やっぱり分からない。

「――君は、私という夫が居ながら、他の男と二人きりで一時を過ごすというのか」
「二人きり…って、老師も居ますよ…―――って、夫っ?だ、だからっ、前にも言いましたけど、私は臨時ですってばっ!」
「…それはそうだけど、周りから見たら、君が私の妻で、私が君の夫という事実には変わりないだろう?そんな中、浩大だろうと他の男と二人きりは、怪しまれるんじゃないか?」
「そ、それは……?」

どうなんだろう?
そうなのかな?
事実がどうあれ、周りから見れば、私と陛下は夫婦で…
そうなると、男性と二人きりというのは不味いのだろうか。
分からなくなってきて、夕鈴は額に手を当てる。
そんな夕鈴に、畳みかけるように黎翔は続けた。

「臨時とは言え、僕たちは夫婦なんだから、夕鈴にも自覚を持って欲しいな」

その言葉に夕鈴は頭を抱える。
夫婦とは言え、臨時なのか。
臨時とは言え、夫婦なのか。
縁談除けの為に、人の前でイチャイチャしたりするから、別に陛下と私の中が冷めきっているわけでもない。
でも、本当の夫婦のように、熱々の関係、というわけでもない。
何故なら、臨時だから。
黎翔に丸めこまれそうになっている事に気付いてない夕鈴だったが。
―――あれ?だけど『臨時』だから…

「――それより夕鈴」
「はい?」

考えが纏まり出した夕鈴に、しかし黎翔は声のトーンを変えた。
話しが変わる予感に、夕鈴は考えを中断してしまった。

「…浩大との特訓とやらは、いつ頃からやってたの?」
「え?…あ、えーっと、…陛下に浩大を紹介された直後辺りからです」
「―――…ふーん………そんなに前から、ねぇ……?」

黎翔の声のトーンが下がったのを感じ、夕鈴は背筋に寒気が走る。
先ほどから陛下が苛立っているのは気付いていたが、何に苛立っているのか分からない。

「―――ねぇ、夕鈴」
「…はい?」
「今度から、僕との稽古の時間を増やそうか」
「………え、でも……政務の時間が…」
「そこは何とかするから」
「いやでも」
「夕鈴」

いつの間にか陛下が私の隣に居て驚く。
思わず飛びのきそうになったが、いつの間にか肩に回っていた陛下の腕に阻まれる。
暫くこのように近づかれた事が無かったため、夕鈴は完全に油断していた。
それでも、黎翔は体を密着させるような事はしない。
夕鈴に逃げられては、元も子もないから。

「…もう浩大とは練習しないで。いくら護衛とはいえ、あいつも男なんだよ?」
「でも…」
「―――良いね?」
「………………………はい……分かり、ました……」

有無を言わせぬ陛下の言葉に、私は頷くしかなかった。
その内容に不満は感じたものの、陛下の様子にそれを言う事も出来ない。
何だか丸めこまれた感が無くは無いが、仕方ないと諦めた。
―――でも、陛下も稽古はマズイ。これ以上はマズイ。
李順さんが怒る様子が目に浮かぶ。

―――後日、その予想は夕鈴の知らない所で現実となる。


************

後日、黎翔は李順に、政務の時間を調整して立ち入り禁止区域に行けないかと提案するも

「―――は?何ですかそれは。駄目に決まってます!」
「え~…少しくらい…」
「臨時の稽古の為に陛下の政務の時間を割くなど、到底許せるはず無いでしょうっ?!」

その李順の気迫に、さすがの黎翔もたじろぐしかない。
実際、政務の時間を減らすなど、出来ないだろうなと黎翔も思っていたので、それ以上は何も言わなかった。
ただし、浩大と夕鈴二人きりの練習を認めたわけではないので、これまでの状態を継続させるわけにはいかない。

可哀想だが、夕鈴には以前のようにまた一人で練習して貰う事にした。
浩大には、厳重に“言い含めた”から、二度と共に練習しようなどとは思うまい。
…本当は、僕と夕鈴の時間を増やしたかったんだけどな…

それは別の方法で実現させよう、と黎翔は思うのだった。


************

「…というわけで、ここでの練習はまた一人でする事になったの…」

後宮の立ち入り禁止区域。
いつものように、午後になってから夕鈴はここに来ていたが、最近の日課となりつつあった浩大との特訓は出来なくなってしまった。
数少ない、稽古の的…じゃなくて、練習相手だったから、夕鈴は残念でならない。
内心、浩大は『助かった…』と思っていたが。

「まあ、へーかが言うんじゃしょーがねーよな」
「…そうね」

稽古着に着替えた夕鈴は、本当に残念そうだ。
武術の稽古では、相手が居るのと居ないのとでは全く違う。
実際、現代で棍をあんなに扱えたのも、陛下との練習あってのことだろうし。
それを、隠密相手に出来たら尚良いだろうに。
本当に残念だ。
諦めきれ無さそうな顔でじー…と浩大を見つめる夕鈴。
それに、冷や汗を覚えた浩大は、すぐに窓から身を乗り出す。

「―――あ」
「―――――まっ!一緒に特訓は無理でも、何か聞きたい事とかあったら答えるからさ!その時は声を掛けてっ。じゃっ」
「―――分かったわ」

そして浩大は窓から出て行った。
夕鈴は名残惜しそうに窓を見ていたが、少し経つと準備運動をし始める。
まずは基礎から。
型も少しやって、一汗流してから棍の練習に入ろう。
柔軟をしながら、普段の流れを確認する。



棍の練習をするには広い場所が必要だ。
調度品や備品を壊したら、李順さんに怒られる程度じゃ済まない。
基礎的な動きを確認し、さて始めようと思ったところ。

「――夕鈴」

集中していたところに声を掛けられたので、夕鈴は棍を声のした方向にビュッと向ける。
しかし、相手の正体が分かるとすぐに下げた。
そして驚愕の声と共に相手に問い掛ける。

「―――陛下っ!?何でここにっ…?」
「様子を見に来た」
「お仕事は」
「休憩中」

端的にそう言うと、陛下が近づいて来る。
しかも、その手には練習用の棍が握られていた。

「僕が夕鈴の練習相手になるよ。浩大より、僕の方が慣れてるでしょ?」
「それは…そうですが…お時間が」
「それは大丈夫。一刻くらいあるから、十分練習できる」

そう言って黎翔は軽く準備運動を始めた。
困惑しながらも、夕鈴はそれ以上は何も言えなかった。



カンッ

カツンッ

ビュッ



立ち入り禁止区域での陛下との練習は、自室でやるそれよりも遥かに動きやすかった。
広さも違うし、余計なものがないからやり易い。
陛下の動きも少しずつ加減を取り払っているのか、当たりそうになる時もある。
もちろん、当たりそうになった時は陛下が逸らしてくれるが。
間合いの取り方や連続した動きの身に着け方など、課題が多く見つかった。

そうこうしているうちに、結構時間が経った。
陛下が「――時間だな。今日はここまでにしよう」と言ったので、私も止める事にした。
二人とも汗を拭いながら、今後の予定を計画する。

「―――今日みたいに偶になら、こっちで棍の練習出来るかな。ここのように広い場所なら、今までよりも本格的に練習できる」
「そうですね」
「…浩大みたいな動きを練習することは出来ないけど、僕でも結構練習台になると思うんだ。―――それで良い?夕鈴」

きっと、白陽国の国民だったら『へ、陛下を練習台になどっ』という言葉が出たのだろうが、生憎夕鈴は未来の人間だったので、言葉の通りに受け取り、そのままお礼を言う。

「はい。宜しくお願いします」
「じゃあ、時間だからもう僕行くね」
「はい。有難うございました。私も着替えたら戻ります」
「うん」

夕鈴は隣室へ、黎翔は政務室へと、それぞれ動き出す。
夕鈴は用意してあったお湯で体の汗を拭い、妃衣装に着替える。
そして棍を折り畳み、稽古着と共に布で覆う。

―――当初の予定とは違ったが、陛下が一緒に練習してくれるなら、とりあえず良いかな?
元々浩大と練習するという話は、現代での乱闘を経験して、もっと棍の練習が必要だと思ったからだ。
とりあえず、練習出来れば問題ない。
相手が陛下なら、実戦を積むには良い練習相手だ。
何せ、陛下はお強い。
これからの特訓を思い、夕鈴は少しわくわくしてきた。


****************

政務室に戻った黎翔は書簡を捌きながら、今後の“計画”を遂行するのに必要なものを揃える算段を頭の中で整えていった。
―――やはり重要なのは、夕鈴から聞きだす事だな……そうなると必ずあれは必要で…

「――陛下。筆が止まっておりますが…」
「…何でもない。李順、この案件は責任者に差し戻せ。詰めが甘い」
「――御意」

一瞬で仕事モードに戻った黎翔に、李順は疑惑の眼差しを向けるも、すぐに書簡を持って去って行く。
部屋から去る李順を確認した黎翔は、再び筆を止めて腕を組む。

李順は確実に反対するだろう。
これまでの言葉や態度から、それは明白。
ならば、秘密裏に進めなければならない。
そして夕鈴にも、気付かれないようにしなければならない。
何故なら、夕鈴にとって確実に好ましくない事だろうからだ。
自分の考えている“計画”は。

ふっ…と黎翔は小さく笑う。
しかし、その笑い声は誰にも聞かれる事は無い。
黎翔は窓を見上げ、後宮に居る“妃”を想う――――


――――黎翔の壮大な“計画”に、未だ夕鈴は気付く術も無い

――――――――――――――――――――――――――――――――

あれ?
「安息日」ってタイトルのくせに稽古してるし、何だか最後は若干不穏。
「安息日」…何処!?


次回予告↓

「とある計画」のために動き出した黎翔。
何も気づかない夕鈴は、黎翔の聞くことに疑問を持たず――?

次回!
花の捕え方
お楽しみに!

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