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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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その出会いは偶然か必然か 8

続きです♪

橋の霊を調伏した夕鈴。
池から上がると―――

―――――――――――――――――――――――――――

「―――ぷはっ!」
「―――――――大丈夫か、夕鈴。」
「…げほっ…あ…はい…なんとか…」

夕鈴と黎翔は橋の近くの水面に浮上した。
呼吸を整えた後、黎翔は夕鈴の腰を取り、池から出ようと泳ぎ出した。

「へ、陛下っ、自分で泳げます!」
「しかし、沈みそうだが?」
「う…」

相当疲れたのか、夕鈴の体は黎翔の腕に支えられなければ今にも沈みそうだ。
でも、王様の手を煩わせられないと慌てるのが夕鈴。
しかしそんな夕鈴の答えを一蹴し、黎翔はさっさと泳ぎ出す。
結局池の縁まで運んでもらい、更に上まで押し上げられた。

「あ、ありがとうございます…」
「いや。」
「陛下っ!ご無事ですかっ!?夕鈴殿もっ!」

そこへ李順が駆け寄って来る。
どうやらなかなか上がって来ない二人を救出するために、警備兵を引き連れて来たようだ。
しかし警備兵は及び腰だったのか、入口付近で溜まっている。
黎翔の姿を確認すると、すぐに駆け寄って来る。
黎翔は自力で陸地に上がってきた。
李順はすぐに黎翔と夕鈴の拭くものを警備兵に指示した。
警備兵たちが遠ざかっていく。
すると黎翔が口を開いた。

「――――夕鈴。」
「はい?」
「君は―――何故あの鈴を私に渡した?」
「え…」
「…陛下?」

夕鈴と李順が同時に声をあげる。

「君は、あの橋の下の池の中に居た悪霊と対峙していたのだろう?その時、君の鈴があれば早く解決したのでは?なのに、私に渡したのは何故だ?」
「それは―――…陛下の身を危険に晒すわけにはいけなかったので…」
「…どういうことだ?あの鈴は、ただの道具ではないのか?」

陛下の周りの気温が下がる。
濡れたままの体には少々キツい。
少し震えながらも、夕鈴は問いに答える。

「…あの鈴は、持っているだけで悪い霊は近づいて来ない作用があるので…」
「…なんだと?」
「それで、危険な橋に行くのに、陛下が巻き込まれてはと思って…。」
「―――では、君が持っていれば君は池に引きずり込まれなかったのでは?」
「それは…そうかもしれませんが…でもそれだと陛下が…」
「私の事はどうでもいい。君は…自分の安全を考えなかったのか?」
「え…」

そんなこと言われても。
私自身は陛下の安全を考えた行動の結果だったのに。
そもそも最初に来てはいけないって陛下に言っていたのに、聞かないで付いて来たのは…
でも怖くて言えない。
なんか理不尽だ。

「…陛下。詳しい事は分かりませんが、そもそも陛下がこちらに来なければこのような事態にならなかったのではないのですか?」
「―――」

正論すぎる李順の言葉に、黎翔は言葉を失う。
助け船を出された夕鈴は、その言葉にこくこくと頷く。
それを見た黎翔は、溜息をついた。
警備兵が拭くものを持って駆け寄って来る。
黎翔と夕鈴はそれを受け取り、各々拭き始めた。
夕鈴が震えながらも何とか拭き終えると、突然体がふわりと浮き上がった。

「―――っ!?」
「陛下?!何を…」

突然浮き上がった感覚に驚いて、上を見上げるとそこには、思ったよりも近い陛下の顔が。
どうやら持ち上げられているらしい。
夕鈴がぽかーんとしていると、李順が気難しい顔で苦言を呈した。
それに黎翔は涼しい顔で答える。

「夕鈴はどうやら悪霊との対決で疲れたようだから、部屋まで運ぶ。」
「それなら警備の者に運ばせますので…っ」
「私が運ぶ。」
「陛下っ!」

そんなやり取りがあったが、疲労困憊の夕鈴にはもうどうでもよかった。
初めて感じる男の人の大きい腕に、悪霊との対決で冷え切った体が温まって来る。
揺られて行くうちに、夕鈴は瞼が重くなって行くのを感じていた。
いつしか「こてん」と黎翔の胸に頭が傾けられ、夕鈴は夢の住人となっていた。
それに黎翔はくすりと笑い

「お休み―――頑張ったね、夕鈴。」

夕鈴は優しい声が聞こえた気がした――――


****************

目が覚めると、そこはいつもの部屋。
後宮で借りている、夕鈴の仕事部屋の寝台だった。
長く眠っていたのか、朝の空気を感じた。
服も替えられている。
夕鈴が持って来ていた、下町の夜着なんかとは違う、上質な服だった。
とりあえず、起きて服を着替える。
いつもの服に着替えると、部屋の外から女官さんの声がかかる。

「お起きになりましたら、部屋に呼ぶよう陛下に申しつけられております。」
「―――分かりました。すぐに参ります。」

やれやれ、起きたらすぐにお呼び出しとは、息つく暇もない。
疲れてすぐに眠ってしまったから、
それでも手早く顔を洗い、髪形を整えて夕鈴は陛下の自室に向かった。
そこには陛下しか居なかった。
意外だったのは…陛下が座っている卓の上にある、やけに豪勢な食事だろうか。
きょとんと首を傾け、次いできょろきょろと首を左右に動かしていると、陛下から声がかかった。

「夕鈴…どうしたの?」
「いえ…李順さんはどこかなって…」
「…どうしてそこで李順が出てくるの?」

あれ…何でいきなり不機嫌になったのかしら?
私、別に変な事言ってないわよね?

「えっと…陛下からお呼びがあるとのことで参ったのですが…仕事の話ではないのですか?」
「―――それもあるけど、まずは食事にしないか?お腹空いてるよね?昨日から何も食べてないはずだから。僕も丁度朝餉の時間だし、一緒に食べよう。」
「―――…え、こんな豪勢な食事を…陛下と一緒に?」

卓の上にあるのは、山海の珍味の限りを尽くしたのではないかというほどの贅沢な一品ばかりだ。
それに「僕も丁度」と陛下は仰ったけど…どう考えても二人分あるわよね…?
というか、陛下と二人で食事とか…畏れ多い。

「お断」
「ほら、早く座って。僕もお腹空いちゃった。食べよ?」

「お断りします」と言おうとした私の言葉は陛下に遮られた。
そしていつの間にか目の前に立っていた陛下は、私の手を取って卓へと誘導し、椅子に座らせた。
その間、僅か5秒足らずの早業である。
―――何て手が早い…
結局座ってしまった夕鈴は、大人しく促されるままに朝餉を陛下と一緒に摂る事になった。



「―――夕鈴。」
「はい?」
「その首の…鈴の事なんだが…。それを付けていたから、僕はあの時池には引っ張られなかったのかな…?」
「…はい。そうだと思います。私もそれを付けていた陛下のお傍に居たので、最初は引っ張られなかったのかと。なので、陛下が離れた途端に、引きずり込まれたのだと思います。」
「―――あの時李順にも言われたけど…僕が行かなければ、あんな風に君が危険な目に会う事は無かったのかな…」
「―――その事なんですか…」

夕鈴は椅子を少し引き、黎翔に向かって深くお辞儀した。

「…な、何?夕鈴、どうしたの?」
「―――此度は、危ない所を助けて頂き、本当に有難うございました。私の仕事でしたのに、陛下のお手を煩わせてしまったこと、誠に申し訳…」
「それは良い。元々、私が一緒に行くと言いださなければ、君は一人で解決出来たのであろう?邪魔をしたのは私だったのだろう…。」
「いえっ、でも、あの悪霊はとても強いものでした。もし一人で対決して、調伏できたとしても池から上がって来られるだけの体力が残っていたかは怪しいものでした。陛下が一緒に居て下さったお陰で最後まで無事だったんです。―――陛下のお陰で助かりました。本当に、有難うございます。」
「―――夕鈴…」

陛下が何を思ったのかは知らないが、その後、陛下は特に何も言わず、ただ「…ご飯、食べようか。」とだけ言って、私たちは食事を再開した。



朝餉も終わり、食後のお茶を飲んでいた頃、部屋の外から足音が聞こえてきた。

「―――入りますよ、陛下。…朝餉はお済みですね?夕鈴殿も。」
「ああ。」
「あ、はい。」
「では早速、お仕事の話に入らせてもらいます。」
「はい。」
「夕鈴殿。貴女が今回この後宮で解決して下さった怪現象は一覧表にもある通り、結構な量があったのですが…貴女は全て解決して下さいましたね。感謝いたします。それに…あの長年立ち入り禁止であった『禁断の反り橋』の怪現象も…こちらは本当にお手柄でした。」
「…有難うございます。」
「報酬は最初の予定の満額と、それにあの反り橋分を上乗せした金額を…そうですね、ざっとこれ位でしょうか。」

そう言って見せられた金額を書いた明細書に、夕鈴は眩暈がした。
―――えっ、こんなに?!
これで一体どれほど長い期間暮らせるの!?
いやでも弟の学費や、父の借金や、家の修繕費、毎日の生活費…意外とすぐ無くなるかも。
特に、父の借金は不定期で突然増える事もあるから要注意だ。

「―――じゃなくて、こんなに貰えません!」
「いえ、これ位で妥当ですよ。―――夕鈴殿、貴女なら分かったのでは?あの場所でどれだけの人数が犠牲になったのかを。それを考慮したら、この金額でもまだ少ないのではないかと。」

―――確かに。
あの時天に昇って行った魂の数々…それは生きていた人のでもあるし、死んでから犠牲になった魂も居たはずだ。
夕鈴が納得したのを確認した李順は、黎翔にも明細書を見せ「陛下、これで宜しいですね?」と確認した。

「ああ…。」
「…どうかされましたか?何か不備でも?」
「―――いや、これでいい。」
「…?そうですか。―――では、夕鈴殿。」
「―――はいっ!」

明細書を見ながら呆然としていた私は、李順さんに呼ばれた声で我に返った。

「―――この度は、お疲れ様でした。お陰で皆も安心して過ごせる事でしょう。夕鈴殿も疲れていると思うので、今日はゆっくり休んで頂き、明日、下町にお帰り頂くということで宜しいですか?」

李順の気遣いに、夕鈴はほっと安堵した。
正直「今すぐ帰れ」と言われても、疲れ切った体には辛いものがあった。
明日になれば、大分体も回復しているだろう。

「―――有難うございます。」

夕鈴は満面の笑みで李順に感謝の意を示した。
李順もつられてふっと微笑む。
そんな二人を、黎翔は静かに眺めていた。

――――――――――――――――――――――――――――――

だから陛下のせいなんだって!
陛下が来なければ、もっとスムーズにお仕事出来たかもしれないのに!
まあ、でもそれについては、夕鈴も言っていますが、体力が限界の夕鈴が池から出るためには人手が必要だったという事で。
陛下はその人手です。
ただそれだけです(笑)

…は∑(一△一;)!?

殺気…!?(((゜Д゜;)))!?

9へ続く

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