雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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そして『日常』へ

皆様今日は♪

今日からまた忙しい…そして眠い…(-_-)zzz

というわけで、とりあえず続きです♪

現代に戻ってきた夕鈴だが、黎翔に襲われた衝撃は拭えなくて―――

――――――――――――――――――――――――――――――――――

【パラレル】
【現代・原作どちらも出ます】



「お早うっ!夕鈴!」
「お早う、明玉」

いつもの風景。いつもの日常。
夕鈴は登校途中、明玉に会い、互いに挨拶を交わす。
博物館に行ったあの日から、すでに3週間近く経っていた。
ある時勇気を出して鏡を見たものの、白陽国に行く事は無かった。
合わせ鏡をしても。
これまで、2週間以上置いてあちらに行かなかった事は無かった。
つまり―――きっと…もう行けないのだと思う。
あの場所には…―――あの人の所には。
―――これが日常。これが…私の生活なの。
自分に言い聞かせるように、夕鈴は心の中で繰り返す。
―――あの日々が、そもそもおかしかったの。
妃として、多くの人に傅かれる日々。
妃として、分不相応な部屋に住んだり、贅沢に暮らしたり。
妃として…―――陛下に愛される……事だったり。
実際にはあれは『演技』と称していたけれど…私はそう思っていたけれど…―――今思うと、陛下にとってそれが『演技』じゃなくなったのはいつからだったのだろう?
本物の妃、と望まれた時から?
演技が過剰と感じた頃から?
―――最初から?
それは無いだろうと、夕鈴は目を瞑る。
最初は絶対物珍しさの方があっただろうし、実際に、そんな雰囲気は感じなかった。
…私がそう思っていただけかもしれないけれど。
今となっては、もう、何も分からない。

「――りん…?―――夕鈴ってば!」
「―――っ?」

明玉に強く呼ばれて、思考の海に漂っていた事を知る。
―――いけない、また考えていた。
頭をぶんぶん振って、思考を弾き出そうとする。

「―――ねぇ……やっぱり、気になってるんじゃないの…?」

何をとも、誰をとも、明玉は言わない。
分かっているのだ。夕鈴が“誰”の事を気にしているのかは。
その明玉の言葉を、夕鈴は頭を振って否定する。

「ううん…そんなんじゃないの。ただ―――」

ただ――――――ほっとしただけ…
そう言いたいのに、何故か口からは出なかった。

…何で?
ほっとしている自分が居るのは確かなの…
なのに…―――何で…?
何でこんなに…今でも陛下の事が気になっている自分が居るの?
あんな事されたのに…酷い事されたのに…

―――自分が分からない…

俯いて再び物想いに耽る親友を、明玉は心配そうに見ていた。


****************

「ただいまー…」

誰も居ない我が家に、夕鈴は一人呟く。
青慎は、今日は友達と図書室で勉強会だそうだ。
勉強熱心な弟で、将来が楽しみだ。
鞄をソファに置いて台所に向かい、お茶を淹れる。
その淹れ方は、動きに無駄が無い。
―――いつの間にか、後宮での淹れ方が沁み付いていたのだ。
元々、お茶を淹れるのは上手かった夕鈴だったが、後宮での日々によって洗練された。
これも、お妃教育の賜物なのだろう。
―――…って、また考えてる…
夕鈴は溜息を吐いて、淹れたお茶を持ってソファに腰かける。
―――今日はバイトも無いし、夕飯…凝った物でも作ろうかしら?
お茶を飲みながら、夕鈴は極力“いつもの事”を考える。
―――そうだ、最近あの料理を作って無いし…青慎に食べさせてあげたい。
茶碗を置き、買うものを指折り考える。
そして、膝を叩いて気合を入れる。
―――よし、買い物に行こう!
お茶を飲み干し、夕鈴は自分の部屋に向かう。
部屋に入り着替えようとクローゼットを開ける。
そこには、最初の頃に着て来た白陽国での妃衣装と、この間の衣装が掛けてある。

「―――」

夕鈴は無言で、それらを見ないように気を付けながら自分の服を取る。
手早く服を着、鏡で恰好をチェックする。
もう、鏡を見る度に『また過去に飛ばされるかも』と思わなくて良い。
それは、私にとって安心できること―――の筈だ。
その筈なのに…何で、こんなに苦しいの?
ぎゅう…と胸元を握る。

「―――っと、いけない。こんな事考えてる暇無かった」

胸に走る痛みをやり過ごし、殊更明るく一人呟く。
青慎に…ついでに、父さんにも良いものを食べて貰う為の買い物をしなきゃ。
夕鈴は財布と携帯を持って、家を出た。



「――――う~ん…何か買い忘れてる気がする…」

スーパーから出た夕鈴。しかしその顔は険しい。
思う様な買い物は出来たものの、何か忘れている気がするのだ。
メモを書いておくんだったわ。失敗した。
いつもなら、買い物に行く前に箇条書きにしたリストを用意するのに。
―――いつもなら…
その単語につきんと再び胸が痛む―――と、その時。

「―――夕鈴じゃねーか。…何そんな不細工になってんだ…?」
「――…。一言余計よっ!几鍔!」

これは険しい顔と言うのだ、険しい顔と!
心の中で相手を詰りながら、夕鈴は振り向いた。
そこには几鍔が居て、夕鈴の表情を見ると普段から皺が寄っている眉間が更に深く刻まれた。

「―――やっぱり変な面してるな…―――まだ、忘れられないのか?」
「―――」

言われた内容に、夕鈴は無言で睨み返す。
明玉もそうだが、几鍔もこの3週間、同じ事を何度も言って来た。
『大丈夫?』
『辛いなら、忘れた方が良いよ』
『もう忘れろ』
『自分の事を考えろ』
それぞれの言葉で、私を心配する声。
分かってる。分かってるわよ。
考えても仕方ない事は。自分じゃどうにもならない事は。
だけど…それでも―――
どんなに“いつもの事”をしていても、考えるのは『あの人』の事なの。
歴史にも残っていない、あの人の痕跡。
私だけが覚えている、あの人の温もり。
3週間前の出来事は、今でも私の心に影を落としている。

それでも―――それでも。
あの人の事が忘れられないの。
私の心に、深く根ざした…あの人の事だけは。
じんわりと、目尻に涙が溜まる。
それに几鍔は慌てたように、手を忙しなく動かした。

「おっ、おいっ…!泣くなっ!どうして良いか分かんねぇよ…!」
「―――泣いてないっ!」

これは涙なんかじゃないっ!
そう夕鈴は思うも、涙が溢れるのは止まらない。
顔を覆ったところで、それは止まるものでは無かった。
いつからこんなに涙脆くなったのだろう?
私は、そんなに弱くなかったはずなのに…。
幼い頃几鍔の喧嘩に巻き込まれて誘拐された時も。
父さんが借金を背負って来た時も。
どんなにバイトが辛くても、生活が苦しくても泣かなかったのに。
泣いた事なんて、無かったのに…。
何で―――今はあの人の事を考えているだけで、涙が出るの?
分からない…―――



分かっているのは―――もう、私に『いつもの日常』は戻って来ないという事だった…

―――――――――――――――――――――――――――――――――

陛下の事が好きだと自覚してから、怒涛の勢いでここまで来ました。
そんな夕鈴に、もうこれまでのような現代での『日常』は戻って来ない。
そんな感じで書きました。

ひたすらこれまでの『日常』をなぞる夕鈴。
痛々しいです…(T_T)


次回予告↓

黎翔の事を忘れられず、気持ちが不安定な夕鈴。
そこに現れたのは―――?

次回、第7話
謎が明かされる時
お楽しみに!

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