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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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ある後宮管理人との出会い 2

続きです♪

―――――――――――――――――――


「李順。老師に夕鈴の事を話したのか?」
「陛下。お戻りに…。…?陛下、どうされたんですか?服が濡れておりますよ。」
「…夕鈴の涙だ。夕鈴が泣いた。」
「…涙?泣いた?夕鈴殿が?」
「ああ。どうやら張老師に言われた言葉が響いて…、…。」
「…そうですか。」
「いや、違うな。」
「陛下?」

李順は驚いた。陛下の言ったことに。
夕鈴殿が泣いたのか。あの気丈な彼女が。
刺客に襲われても逃げ回り、慣れない陛下の演技にも耐えていた彼女が。
そして老師に追い打ちでもかけられたのかと思いきや、陛下は違うと言った。

「夕鈴は、こちらに来てから一度も泣いていない。それは私たちにも原因があるのではないか?」

夕鈴の涙を見てから気づいた。
彼女の涙を見るのは初めてだと。そして思った。
知っている人も、知っている場所も、知っている常識も、一切ない彼女は、どれだけ心細かったのだろうか。
牢屋に入れられる、問い質される、話が通じない、刺客に襲われる…
―――普通は泣いてもおかしくないんじゃないか?
それでも彼女は泣かなかった。一度も。

臨時花嫁になってからも未来の話はした。
けど、信じる信じないの話は、しなくなった。
確かめる手段がない以上、こちらとしても彼女としても、続けられなかった。
それよりも臨時として、この後宮で生きていくための手段が先行した。
目まぐるしく過ぎ去る日々。
彼女は弱音を吐かなかったのだ。

そしてそれは、私や李順にも責任があると思った。
知らない土地でいきなり牢屋で目覚めた夕鈴。
混乱覚め遣らぬ中、彼女を質問攻めにした。しかも、信じられないと言った。
勿論それは、突然現れた夕鈴が何者かを明らかにするためにはどうしても必要なことだった。けれどもう少しだけでも、夕鈴の心を思いやってはやれなかったのだろうか。
今は強くそう思う。
後宮で過ごすようになって、私の話し相手をするようになっても、気は休まらなかっただろう。そうこうしているうちに刺客が現れ、夕鈴は臨時花嫁をすることになった。
突然始まった、お妃教育や夫婦演技をする毎日。
鍛えたい、体力をつけたいと稽古や特訓も始めた。

その後暫くして彼女は過労で倒れた。
その時は体にきていた。
今思えば、あれが兆候だったのかもしれない。限界だと。
だけどその時は、詰め込みすぎたお妃教育や、慣れない演技が原因だと思った。

そして今回も、今まで以上に体を動かしたいと言う夕鈴。
これも兆候だったのではないか。
そんな中、私と李順以外に「そのようなこと信じられない」と言う老師が現れたことで、再び心の緊張の糸が切れてしまったのではないか。
もう限界だと。帰りたいと。

李順はどういうことですかと聞きたかったが、深く考え事を始めた陛下を見て諦め、拱手して静かに部屋を退室した。


***************


朝目覚めると寝台に居た。
…いつ寝たのか、記憶にない。
夕鈴は起き上がり、身支度を整えた。侍女に顔洗いの水と朝食の準備を頼んだ。
その時、侍女に心配そうな顔をされた。
どうしたのだろう、と思って見返すと「…今、お顔を洗う水と、冷えた布をご用意いたします。」と言われ、去って行った。
顔を触ると、涙の痕があった。目の周りも腫れぼったい。

―――ああ、私泣いたんだっけ。

思い出した。陛下と老師の話をしている最中に泣いちゃったんだ。
私はくすっと笑った。
変なの。今までどんなことが起きても泣かなかったのに。
あんなことで泣くなんて。
でも思い切り泣いたからか、気持ちは少しすっきりしていた。



「―――夕鈴。」
「――!陛下!お早うございます。」

朝食を食べていると陛下が現れた。その顔は心配そうだ。
人払いをして、陛下が向かいに腰かけた。

「――――大丈夫?」
「はい。思い切り泣いたせいか、何だかすっきりしちゃいました。ご心配おかけして申し訳ありません。」
「誤って貰う必要はないよ。心配はしたけどね。―――ねえ、夕鈴?」
「はい?」
「―――…無理、してない?」
「…?」

私は首を傾げた。
何のことだろう。そう思って。

「―――未来から来て、刺客に襲われて、花嫁になって―――…正直、しんどいと思うんだ。夕鈴は頑張っていると思うけど…」
「陛下。私は大丈夫です。」

意味が分かった。陛下は心配しているのだ。
私が泣いた理由を。
でも、こればかりはどうしようもないと思って、私は大丈夫と言った。
だって、私がこの時代にここで生きるためには、これしかないのだ。

「しかし…」
「昨日は何だか少し感傷的になってしまって…。でも、もう大丈夫です。今日もちゃんとお仕事しますよ。」

ぎこちない笑顔で言い切られて、僕は何も言えなくなってしまった。
未だに涙の痕が残る夕鈴に、本当は謝りたかった。
でも「大丈夫だ」と言われて言葉を飲み込んでしまった。
信じてあげられなくてごめんね、と。
為政者として、不確かな事を信じるわけにはいかない事は事実だ。
でも、夕鈴のこととなると、それは間違いのように感じてしまう。

―――信じてあげられなくてごめんね
―――でも力になりたいんだ
―――心配なんだ
―――無理してほしくない

感情を隠してしまったであろう夕鈴に、それらを伝える言葉を、伝える術を、
―――僕は持っていなかった。



夕鈴の部屋から退室した僕は、見た目は威厳のある狼陛下。
でも心の中では、夕鈴の言葉にしょんぼりしていた小犬陛下だ。
政務室に向かって足を進める中、僕は夕鈴の事を考えていた。

――やっぱり帰りたいのかな…
――帰ることが、夕鈴の望みなのかな。

自分の気持ちと夕鈴の気持ち。
どちらを優先したらいいのか、黎翔は迷っていた。


*************


「―――お主、もっと陛下に頼ってはどうかね?」
「―――はい?突然何を言い出すんですか?」

立ち入り禁止区域で掃除をしていると、老師に声をかけられた。
老師は顎の髭を弄りながら話し続けた。

「泣いても慰められる。朝に心配で顔を見に来る。陛下はお前さんを気に入っているようじゃのう。意地を張らずに、もっと陛下に頼ればよいものを。」
「な!ななな、何でそのことを知ってるんですか!?」

あの時は夜の寝室と、朝の人払い後の朝食時。誰もいなかったはずなのに、何故それを知っているの?

「なに、ちょっとな。」
「答えになっていません!」
「陛下も気にしているようじゃし…何なら、ずっとここにおっても良いじゃろう。」
「――どうしてそうなるんですか?」
「お主、陛下のことは嫌いか?」
「…嫌いではないですよ。」
「では好きか?」
「…好きか嫌いか、で言うならば好きですよ。お優しいですし。」
「―――そうか。―――優しいか。」

老師は夕鈴のその言葉を受けて考え込む。
あの御方は、決して優しくはない。何せ冷酷非情と呼ばれる「狼陛下」だ。
その辺でただ困っているだけの娘を助けるだけなら、優しくする必要もないだろう。
――――それなら…いっそ…

「――お主、陛下の御子を産む気はないかね。」
「――!!?へ!?」

ななな!なんて事を言い出すんだこのじーさん!!!
陛下を頼れだとか、ずっといればいいだとか、好きか嫌いかだとか
わけの分かんない事を言っているかと思ったら…
あまつさえ…陛下の子を産め?
――っ、じょ、冗談きついわよ?!
そんなこと出来るわけ、いや、そんなことになるわけないじゃない!

「私はこの時代の人間じゃないんですよ!妃だって臨時だし!そんな気は、さらさらありません!冗談でもそう言う事言わないでください!」
「…良い線いっとると思うんじゃがのー。」
「何か言いましたか?!」


その後も掃除に行くたびに老師に「陛下との仲はどうじゃ?」とか「何か進展はあったかのう」とか「陛下との子を産む気になったのなら協力するぞい!」とか無駄に絡まれるようになった。
精神統一しながら掃除をやったお陰で、老師に絡まれながらも一室の掃除が完璧に終わったの。当初考えたように、立ち入り禁止区域に居る時間の前半を掃除、後半を稽古に使った。掃除の後、着替えて稽古をし始めた妃(臨時)に老師が

「―――驚きすぎてぎっくり腰が再発するかと思ったわい!!!」

と突っ込んだそうな。



―――――――――――――――――――――

シリアスな雰囲気漂う話でした。
書き始めた時はこんなにも長くなるとは思いませんでしたよ!
突然夕鈴泣きだしちゃったし。これ、予想外だったんです。
でも、そろそろ限界が来てるんじゃないかなーと思います。

そして陛下はぶれっぶれに揺れ動いています。
最後はほぼギャグになりましたが。

実は最初以降、未来の話はしてないんですよね、この二人←あ、夕鈴と陛下の事ですよ!
いや、青慎の話とか、学校の話はしていると思います。
でも、陛下にとっては新鮮な話、という感じ。身近な生活の話じゃない。
だから楽しいし、夕鈴も話していて楽しい。
だから、信じる信じないの話は出てこなかった、そういう設定です。

国を背負う者としては、「未来から来た」は信じられない。
でも、夕鈴のことは信じたい。
そんな陛下の心境です。

もうこの段階では、信じられるか信じられないか、じゃないんですよね。
信じてあげるか、信じて上げようとするか。
きっとそれが夕鈴にとって必要だったんじゃないかなぁ…
でも、それは無理なんだな、陛下にとっても、李順さんにとっても。
だから、夕鈴は辛い。苦しい。
書いていて辛い部分でした(>_<)


次回予告↓

結構多忙なお妃様稼業。
その一日の詳しい予定とは―――?

次回!
お妃様の本日の予定
お楽しみに!

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「狼陛下の花嫁」の二次小説を書いています。
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