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2013.12/05 [Thu]
浦島物語―黎翔―④
続きですよ~♪
宴での乙姫を見て、黎翔はとある決意をした―――
―――――――――――――――――――――
【浦島パロディ】
【捏造】
その声に頭の中が真っ白になった。
この部屋には基本、私が呼ばない限り誰も入れないはずだ。
お母様や、紅珠以外は。
なのに、声がする。それも、男性の声。
男に免疫のない乙姫は、入口を見て、見るからにうろたえ始めた。
「―――あ、あなたは…黎翔様…?」
「そうです。」
「な…何故ここに?…あなた様はご存じないかもしれませんが、ここには、私の許可無くては入れない事になっているのです。なので…」
「許可無く入室するご無礼をお許しを。―――しかし、私は立ち去るつもりはない。」
直前までの恭しい態度を一変させ、目の前の人間の男性は慇懃な言葉を発する。
瞬時に硬直した乙姫は黎翔が近づく足音に我に返り、一歩…また一歩と近づく足音と同じ程、じりじりと後ろに退いて行く。
「な…立ち去るつもりはない…とは?そもそも、何故ここに?」
「あなたに会いに来た。」
「―――何故私に?何か不都合でもありましたか?」
私は考えた。
宴の規模は、客を持て成すには十分な程だったと思うし、部屋も最上級の場所を選んだ。
―――何しに来たのだろう。
それだけが気になった。
「もしかして―――苦手な食べ物でもありましたか?一応、ここに暮らす竜宮の者と地上の人間とは、食べ物がさして変わらないと知っていたので、いつものお料理をお出ししたのですが…。もしや、部屋に何か?寝台の掛け布の柄が気に入りませんでしたか?ならばすぐに代えさせて…」
「そのようなことではない。」
硬質な声が私の言葉を遮った。
その言葉の鋭さに、私は言葉を噤んでしまった。
そうしている間も、黎翔は間合いを詰めてくる。
…何だろう、怖い。
本能的にそう感じた。
蛇に睨まれた蛙…のような心境だ。
青ざめて後ろにまた一歩退くと、何か固い感触がした。
「―――ッ!」
膝がカクンッと下がり、そこにあった―――寝台へと座りこむ。
それに気を取られてると、黎翔はもうすぐ目の前に立っていた。
恐る恐る視線を上げると…紅い瞳とぶつかった。
「―――ひっ!だ、誰か…っ…むぐっ!」
「―――叫ばないでくれ。怖がらせるつもりじゃない。」
どう考えたって、怖いわよーっ!
自分の部屋で、寝台で、男性に口を塞がれた状態で、叫ばずにいられる女性が居ようか。
―――いや、居ない。
むぐむぐ…と口に当てられた手を引きはがそうと躍起になっていると、耳元に優しく囁かれた。
「―――叫ばないで。何もしないから。ただ話がしたいんだ―――大きな声を出さないなら離すよ。いい?」
先ほど思った「怖い」という雰囲気が急速に萎えて行くのを感じた。
こくんこくんと頷きながら、相手を見る。
その頷きを確認したのか、相手も口から手を外し、体を離し、口を開いた。
「まずは―――突然入って来てごめんね。でも、どうしても二人で話がしたくて。」
「―――はぁ…。」
先ほどの怖い雰囲気はどこへやら。
今の黎翔…様は、柔らかい雰囲気を醸し出している。
最初に謁見の間で会った時は、普通の人間の男性に見えて、先ほど部屋に押し掛けた時は怖くて…今はこれ。
どれが本当の彼なのだろう。
「僕が来たのは―――…乙姫、あなたの本当の名前を知りたくて、直接ここに来たんだ。」
「は―――…?私の、名前?」
そんなもの知ってどうなるのだろうか。
どうせ、この一度限りの出会い。
再び会う事は無い。
乙姫でもいいはずだ。
私の戸惑いを、黎翔様は違う意味で捉えたらしい。
「いや、乙姫が本名で無いというのは、宴で知ったんだ。周りの人間…という言い方は正しくなさそうだが…周りの者が『今代の乙姫様は、随分淑やかであらせられる』と言っていたので。」
「…淑やか?」
乙姫は別の所に反応した。
淑やか…普段の私を知っている者からすれば、これほど程遠い言葉は無い、と言うだろうな。
思考が飛んで行った私に、黎翔は顔を近付ける。
「―――それで、名前は何と言う?」
「―――わっ!ち、近いですっ!ちょっと離れて」
「―――名前を教えて頂きたい。」
「―――わ、手を握らな…っ、ゆ、夕鈴ですっ!夕暮れの夕に、鈴で夕鈴、それが、私の名前ですっ!だから離してっ!」
「―――夕鈴…夕鈴…か…。」
すると黎翔は、握った手に力を入れ、なお顔を近づけてくる。
―――何でっ!?名前を教えたのにっ!
しかも、若干さっきの怖い雰囲気が!
これじゃ教え損だ。
実は黎翔は『名前を教えてくれたら離す』とは一言も言っていないのだが、混乱していた乙姫―――夕鈴は、そのことに気づかない。
「―――夕鈴、私と共に来てくれないか?」
「―――は?」
―――――――――――――――――――――
ちょっとちょっとちょっと!
黎翔さん!
乙姫様は男慣れしてないんだから、もっとソフトに行こうよ!
これだから狼は!!!
そして最後の爆弾発言。
……何を言っているのやら(笑)
→⑤へ続く
宴での乙姫を見て、黎翔はとある決意をした―――
―――――――――――――――――――――
【浦島パロディ】
【捏造】
その声に頭の中が真っ白になった。
この部屋には基本、私が呼ばない限り誰も入れないはずだ。
お母様や、紅珠以外は。
なのに、声がする。それも、男性の声。
男に免疫のない乙姫は、入口を見て、見るからにうろたえ始めた。
「―――あ、あなたは…黎翔様…?」
「そうです。」
「な…何故ここに?…あなた様はご存じないかもしれませんが、ここには、私の許可無くては入れない事になっているのです。なので…」
「許可無く入室するご無礼をお許しを。―――しかし、私は立ち去るつもりはない。」
直前までの恭しい態度を一変させ、目の前の人間の男性は慇懃な言葉を発する。
瞬時に硬直した乙姫は黎翔が近づく足音に我に返り、一歩…また一歩と近づく足音と同じ程、じりじりと後ろに退いて行く。
「な…立ち去るつもりはない…とは?そもそも、何故ここに?」
「あなたに会いに来た。」
「―――何故私に?何か不都合でもありましたか?」
私は考えた。
宴の規模は、客を持て成すには十分な程だったと思うし、部屋も最上級の場所を選んだ。
―――何しに来たのだろう。
それだけが気になった。
「もしかして―――苦手な食べ物でもありましたか?一応、ここに暮らす竜宮の者と地上の人間とは、食べ物がさして変わらないと知っていたので、いつものお料理をお出ししたのですが…。もしや、部屋に何か?寝台の掛け布の柄が気に入りませんでしたか?ならばすぐに代えさせて…」
「そのようなことではない。」
硬質な声が私の言葉を遮った。
その言葉の鋭さに、私は言葉を噤んでしまった。
そうしている間も、黎翔は間合いを詰めてくる。
…何だろう、怖い。
本能的にそう感じた。
蛇に睨まれた蛙…のような心境だ。
青ざめて後ろにまた一歩退くと、何か固い感触がした。
「―――ッ!」
膝がカクンッと下がり、そこにあった―――寝台へと座りこむ。
それに気を取られてると、黎翔はもうすぐ目の前に立っていた。
恐る恐る視線を上げると…紅い瞳とぶつかった。
「―――ひっ!だ、誰か…っ…むぐっ!」
「―――叫ばないでくれ。怖がらせるつもりじゃない。」
どう考えたって、怖いわよーっ!
自分の部屋で、寝台で、男性に口を塞がれた状態で、叫ばずにいられる女性が居ようか。
―――いや、居ない。
むぐむぐ…と口に当てられた手を引きはがそうと躍起になっていると、耳元に優しく囁かれた。
「―――叫ばないで。何もしないから。ただ話がしたいんだ―――大きな声を出さないなら離すよ。いい?」
先ほど思った「怖い」という雰囲気が急速に萎えて行くのを感じた。
こくんこくんと頷きながら、相手を見る。
その頷きを確認したのか、相手も口から手を外し、体を離し、口を開いた。
「まずは―――突然入って来てごめんね。でも、どうしても二人で話がしたくて。」
「―――はぁ…。」
先ほどの怖い雰囲気はどこへやら。
今の黎翔…様は、柔らかい雰囲気を醸し出している。
最初に謁見の間で会った時は、普通の人間の男性に見えて、先ほど部屋に押し掛けた時は怖くて…今はこれ。
どれが本当の彼なのだろう。
「僕が来たのは―――…乙姫、あなたの本当の名前を知りたくて、直接ここに来たんだ。」
「は―――…?私の、名前?」
そんなもの知ってどうなるのだろうか。
どうせ、この一度限りの出会い。
再び会う事は無い。
乙姫でもいいはずだ。
私の戸惑いを、黎翔様は違う意味で捉えたらしい。
「いや、乙姫が本名で無いというのは、宴で知ったんだ。周りの人間…という言い方は正しくなさそうだが…周りの者が『今代の乙姫様は、随分淑やかであらせられる』と言っていたので。」
「…淑やか?」
乙姫は別の所に反応した。
淑やか…普段の私を知っている者からすれば、これほど程遠い言葉は無い、と言うだろうな。
思考が飛んで行った私に、黎翔は顔を近付ける。
「―――それで、名前は何と言う?」
「―――わっ!ち、近いですっ!ちょっと離れて」
「―――名前を教えて頂きたい。」
「―――わ、手を握らな…っ、ゆ、夕鈴ですっ!夕暮れの夕に、鈴で夕鈴、それが、私の名前ですっ!だから離してっ!」
「―――夕鈴…夕鈴…か…。」
すると黎翔は、握った手に力を入れ、なお顔を近づけてくる。
―――何でっ!?名前を教えたのにっ!
しかも、若干さっきの怖い雰囲気が!
これじゃ教え損だ。
実は黎翔は『名前を教えてくれたら離す』とは一言も言っていないのだが、混乱していた乙姫―――夕鈴は、そのことに気づかない。
「―――夕鈴、私と共に来てくれないか?」
「―――は?」
―――――――――――――――――――――
ちょっとちょっとちょっと!
黎翔さん!
乙姫様は男慣れしてないんだから、もっとソフトに行こうよ!
これだから狼は!!!
そして最後の爆弾発言。
……何を言っているのやら(笑)
→⑤へ続く
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NoTitle
優しく包んであげようよ~
いきなりオオカミさんは怖すぎますよー(><)