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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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変化の予感 2

続きです♪

黎翔に騙された、と怒りのまま下町へと帰って行った夕鈴であった――

――――――――――――――――――


下町の自分の家までの道を、怒りなのか悲しみなのか良く分からない感情を抱きながら歩いていた夕鈴は、横道から聞き慣れた声に呼び止められた。

「―――よお、帰って来てたのか。」
「――――――几鍔。」

そこには、いつも父親が金を工面しに行く金貸しの息子が居た。
相手は私の事を幼馴染と称しているが、金貸しの息子などを幼馴染とは認めていない。
下町で最初に声を掛けられたのがこいつだった事で、夕鈴の気持ちは更に降下した。

「―――何の用?…父さんがまた借金した、だったら聞かないわよ。」
「そんなんじゃねえよ。…お前が帰って来てるって聞いたからな。」
「だから何?あんたに関係ないじゃない。」

夕鈴は殊更冷たい声を放つ。
常ならぬ夕鈴の様子に何かあったと確信した几鍔は、一つ思い当たることを言った。

「―――あの『李翔』とかいう奴と何かあったのか?」
「―――」

夕鈴の目が更に据わった。
それで図星だったのだろうと思った几鍔。
そして一つ溜息を吐いた。

「…お前がそんな様子でここに居るってことは……騙されていたと自覚したか?」
「―――ッ!」
「だから言ったろ。貴族は下町娘なんかマトモに相手しねぇって。」
「――――――――…ええ………そうね、本当に……そうだったわ……」

あの人は私に気を許してなんていなかった。
だって、本当の事を話してなんてくれてなかったんだもの。
『演技』と言っておけば、私なんて騙せると思っていたんだわ、きっと。
実際、そうだったし。
私は騙されていたんだわ。
『狼陛下』に。
思い出すとふつふつと怒りが湧いてきたが、それ以上に哀しみがこみ上げてきた。
少しは信頼されていたと思ったのに。
遠い人だけど、とても手の届かない方だけど、味方になれるって。
力になれてるって。
でも、そんな私は独り善がりだったのね。
自嘲気味に笑う夕鈴を見ても、几鍔は何も追及して来なかった。
ただ、頭にぽんと手を乗せて。

「―――ま、とにかく帰って来たんだ。家に帰るんだろう?青慎も多分、もうお前が帰って来てる事知ってるぞ?……会いに行ってやれ。」

そう言っただけだった。
いつもなら手を払いのける所だったが、常なら感じない労りを、夕鈴は感じた。

「―――あんたに言われなくったって…」

だから、返す言葉には覇気がなかった。


*****************

「――――姉さんっ……お帰りなさい…」
「ただいま、青慎。」

青慎は夕鈴を見て、本当に帰って来たんだと思った。
帰って来たのは純粋に嬉しかった。
しかしその顔色を見て、とても良かったとは言えなかった。
姉はもう泣いて来たような顔色をしていたからだ。

「―――何かあったの?」
「……ちょっとね。私、仕事辞めて来たの。」
「え…」
「だから、また明日からバイトを探すわ。今日はもう休むわね…」
「あ…うん…」

そう言って、姉は部屋へと去って行ってしまった。
何があったのか聞けず、青慎は姉の背を黙って見てることしか出来なかった。

「―――青慎。」
「―――!几…っ……鍔さん…」

突然戸口から掛けられた声に、一瞬大きな声を出してしまったが、姉の事を考え、声を潜めた。

「―――あいつは…部屋か…」
「はい……。―――…一体、何があったんですか?」
「―――詳しい事は分からねぇが、どうやらあのお役人が絡んでいるみたいだぜ?」

チッと舌打ちをする几鍔さんも、どうやら姉さんが心配なようで、部屋の方を見ている。
僕は『李翔さん』が絡んでいるんだと知り、驚いた。

「―――李翔さんが?何で…」
「俺はそれ以上知らねぇ。……ったく、だからあいつは胡散臭ぇって…」
「でも、李翔さんは……」

そんな人物には見えなかった。
少なくとも、自分には。
李翔さんが、姉を泣かせたのだろうか。
僕は不安になって、姉さんの部屋の方を見た。
すると、ぽんと頭に手が置かれる。

「―――心配すんな。あいつはそんなヤワじゃねぇだろ。」
「…」
「また明日様子を見に来る。…じゃあな。」
「はい…。」

そう言って几鍔さんは帰って行った。
青慎はとりあえず夕食を作ろうと、台所に足を運んだ。


**************

家に帰って来て少し落ち着いた…気がする。
夕鈴は寝台に横になりながら考え事をしていた。

―――――とにかく王宮から離れたくて、勢いで出てきたけど、借金が消えるわけではない。
きっと、李順さんから何らかの伝言が来るだろう。
李順さんは今まで通り徐々に借金返済するのを待って…くれないわよね。
そう予想していた。
臨時花嫁の事も、借金の事も極秘事項だ。
多分、浩大が明日辺り来ると思う。
でも、すぐには返済できない。

夕鈴は寝返りを打ってうつ伏せになる。
―――やっぱり、几鍔からお金を借りるしかないかしら。
嫌だけど。
物凄く嫌だけど。
でも、それしか方法は無い。
詳しい話を聞いた後に、話をつけに行くか。

そこまで考え、夕鈴は再び仰向けになる。

―――――狼陛下も、陛下の一面。
考えてみたら、確かにこれまでもそれらしい事はあった。
刺客に襲われた時、いくら演技でもあそこまで恐ろしいオーラを、普通は出せない。
そういえば『戦場の鬼神』という名前もあったわね。
あれも、つまりそういうことかしら。
陛下は強い。
それは、例え狼陛下が演技であったとしても、本当の事で。

―――頭が痛くなってきた。
考えれば考えるだけ、あの人の事が分からなくなる。
とにかく、今は『騙されていた。嘘を吐かれていた。』という衝撃の方が強すぎる。
頭を冷やしたい。
そう考え、夕鈴は寝る事にした。
掛け布を手繰り寄せる。
すると、窓から「コン コン」という音がした。

「――――?」

夕鈴は窓の方を見る。
誰も居ない。
でもこんな呼び方をする人物に、一人だけ心当たりがあった。

「―――まさか…」

夕鈴は窓を開ける。
そこには―――――――

「―――ごめん、お妃ちゃん。もう寝てた?」
「…まだ寝てないけど。」
「そう、良かった。―――李順さんから伝言だよ。」
「…早いわね。」

いくらなんでも今日中に来るとは思わなかった。
早くても、明日くらいにしてくれると思ったから。

「『借金は帳消しにはしません。返済方法はそちらにお任せします。』…だってよ。」
「そう…やっぱり。」
「…これからどーすんの?返す当てはあるの?」
「几鍔にお金を借りるわ。そしてバイトして返済する。何年かかっても良いから、そうするわ。」

例え、何年かかっても。
夕鈴は浩大を見据え、そうはっきりと言う。
すると、浩大は真剣な表情になって言った。

「―――お妃ちゃん。本当にもう戻らないの?」
「―――」
「陛下…沈んでたよ?お妃ちゃんが王宮出て行ったって知って。」

そんなこと言われても、事実は消えない。
私は騙されて、陛下は騙していた。
その事実は。

「浩大。…もう私を妃って呼ばないで。私はただのバイトで…もう妃じゃないし。」
「へーかはきっとそう思ってないよ。」
「陛下は関係ないわ。それに…李順さんは認めてくれたんでしょう?」
「借金はビタ一文まけないとも言っていたね。」
「…さすが、李順さん…」

お金に関しては、夕鈴もあの人とは気が合うのだろう。
この場合、嬉しくはないが。
少し考えた素振りを見せ、浩大は笑顔を見せた。

「―――リョーカイ!じゃあ、李順さんにはそう伝えておくねっ。じゃーね、お妃ちゃん!」
「―――ッ、だから、もう妃じゃないって…っ!」

そう喚くものの、もう浩大の姿は無かった。
相変わらず、神出鬼没な隠密だ。
風のように去って行った隠密に、一抹の寂しさを感じながら、夕鈴は窓を閉めた。
そして今度こそ寝台に横になり、眠りへと誘われていった。


****************

浩大は下町から王宮へと帰った後、李順のところではなく真っ直ぐ黎翔の所へと向かった。
李順からも、そうするよう言われている。

「へーか、お妃ちゃんとこ行ってきたよ……っ、うわっ」
「……で?」

窓からするっと入ると、いきなり小刀を投げつけられた。
どうやら、そうとう不機嫌なようだ。
にじみ出るオーラが黒い。
浩大は冷や汗を背に感じながらも、夕鈴と話した内容を話し始める。

「お妃ちゃんに王宮に戻る意思はなし。李順さんからの伝言も伝えたけど「そう。」としか言ってなかったな。」
「―――」
「へーかが沈んでるぜ?って言ってもみたけど『関係無い』とも言ってたかな…――うおっ!?」
「そこはいい。――――他には?」
「他と言いますと?」
「白を切るな。借金返済について、何か話しただろう。それを話せ。」
「ああ…それ…―――幼馴染の金貸し君に借りるって言ってたね。」
「―――」
「何年かかっても、バイトして返済するってさ。いや~お妃ちゃんって、本当に頑固だよね~…って、うおっ!?」
「―――余計な事を言うその口は、いらないようだな…?」
「すんませんっ!調子に乗りましたっ!!!―――――でも、へーか。これで良いの?お妃ちゃん、このままじゃ戻って来ねーよ?」
「―――――――…報告は以上か?」
「ハイ。」
「…ではもう良い。…下がれ。」
「…リョーカイ。」

そう言って浩大は去って行った。
黎翔は浩大からの報告を聞き、片手で顔を覆う。

――――もう戻らない?夕鈴が?
幼馴染の金貸し君にお金を借りるという。
それは、本当にもうここには戻らないという確固たる意思表示だった。

――――そんなにも、僕の事が嫌いになったの?
『狼陛下』の事を話せないままにここまできて、結果騙した姿になってしまった。
それが、そんなにも夕鈴を傷つけたのだろうか。
いや、騙されて傷つかない人間は少なくない。
当然だ。
それに、彼女は嘘が嫌いなのだ。
余計にその衝撃は大きかったのかもしれない。

黎翔は、顔を覆っていた手を外し、溜息を吐いた。

―――本当に、もう夕鈴はここには戻らないのか?

王宮。
ここは様々な欲望が渦巻く、伏魔殿。
夕鈴の様な、人を疑う事の知らない純粋な人間には、住みにくい世界だ。
闇が蠢く、この場所は。

―――これで、良かったのかもしれないな。

彼女がその闇に囚われる前に、自分から逃げ出してくれて。
黎翔は、そう思い始めていた。
椅子に背を預ける。
そして考え始める。
――――彼女の居ない、これからを。

「―――ッ!!!」

自分に耐えられるのか。
そんな世界で。
彼女の居ない世界で。

もう、彼女の居る世界を知ってしまった。
それを知らない、昔にはもう戻れない。
あの、包み込むような温かさを知った後では。

―――耐えられない。

黎翔は起き上がり、机に片肘を付け、頭を預ける。
自分には、もう彼女の居ない世界など考えられない。
そう思う自分が居る事を自覚した。

以前から少しずつ育ってきた「その感情」に、黎翔は向き合った。
最初は「逃がしたくない」だった。
それは何故かという事も考えたが、それ以上は考えまいと蓋をした。
それを深く追求すると、彼女と一緒に居られなくなると思ったから。
それはそのうち「手放したくない」になった。
傍に居て欲しい。
自分の傍に。
今でも変わらない。

「――――“嘘つき”か…」

あの時、夕鈴は肩を怒らせ、目に涙を湛えていた。
あんな顔させるつもりではなかった。
怒りに、悲しみに、絶望に…そんな顔には。
ただ、笑って居て欲しかった。

「――――――――」

どうすれば、夕鈴はまたここに戻って来てくれるだろう。
黎翔はそう考えていた。
そこで、一つの出来事を思い出した。
最初の頃、囮の話で夕鈴が怒ったことがあった。
あの時も“嘘つき”と怒られた。
でも、最終的には、笑って許してくれた。

――ちゃんと理由を話せば…

希望が無いわけではない。
真摯な態度で謝れば。
そこまで考えたところで、部屋の入口に気配を感じた。

「―――失礼します。陛下。」
「…李順か。」

入って来たのは李順だった。
「今日は政務になりませんね」と宰相のところへ仕事を持って行った後、姿を見せなかった側近は、浩大から報告を受けて、こちらの様子を見に来たらしい。

「―――どうなさるおつもりですか?」
「―――どう、とは?」

李順は突然切り出した。
聞いている内容は分かるが、それを聞いて来るのが意外だった。
だって、李順は事あるごとに諫めてきたから。

「―――私は、最終的には陛下の決定に従います――――そう、最初の頃にも申しました。陛下がどうしたいのか…それに気づかぬほど、私は鈍くありません。」
「―――」

黎翔は黙った。
この側近にも気持ちが筒抜けだったとは。
まあ、私も隠していなかったが。

「ただ、彼女を説得するには、相当の努力が必要ですよ。何せ、我々に騙されたと思っているようですから。」
「分かっている……それに、それは事実だろう。」
「どうなさるおつもりで?」
「―――精一杯、謝るしか方法は無い。」
「―――」

今度は李順が黙った。
戦場の鬼神と呼ばれ、荒れ果てた内政を次々と粛正していった『冷酷非情の狼陛下』に、謝るしか方法を見出させない庶民の娘。
…ある意味、お似合いなのかもしれない。
振り回される周りからしたら、傍迷惑な二人だが。
それでも、陛下が望む事が「そう」ならば。
―――私はそれに従いましょう。

「それでは、そのように。」
「ああ。―――ありがとう、李順。」

李順は驚いた。
そこには、「彼女」が『小犬』と称する陛下が居た。

「夕鈴のこと、認めてくれて。」
「―――別に、あの娘を認めたわけではありません。今でも、考え直してくれるなら、陛下にそう進言いたしますよ。」
「それは無い。」
「…でしょうとも。―――では…浩大、聞いていたでしょう。」
「ほーいっ!こうなると思ってたっ!」
「貴方は夕鈴殿の身辺警護に戻って下さい。もちろん、夕鈴殿には知られないように。」
「ほーい。」
「陛下。とりあえず今日はお休み下さい。彼女ももう寝ています。」
「―――分かった。」

本当はすぐにでも行きたい気持ちでいっぱいだったが、黎翔は我慢することにした。
闇が、王宮を包み込む。
―――光を、早く迎えに行かねば。


****************

――――――――――――――――――

几鍔はどこまでもアニキ☆←意味不明
頼りに…というか、頼もしい♪

それに引き換え、陛下のうじうじ場面が際立つwww
はよ行け!!


3へ続く

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*Comment

NoTitle 

    へーか・・・・ヘタr・・・・・・(,,Ծ‸Ծ,,)
  • posted by ママ 
  • URL 
  • 2013.12/09 03:37分 
  • [Edit]

ママ様へ 

もちろん、へーかはへた…

…はっ∑(ー_ー;)!!

殺気が…!?
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.12/09 10:59分 
  • [Edit]

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さき

Author:さき
さきと申します。
「狼陛下の花嫁」の二次小説を書いています。
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