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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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変化の予感 3

続き&一旦終わりです♪

下町に帰ったものの、まだ気が収まらない夕鈴。
一方その頃、王宮で黎翔は―――?

――――――――――――――――――――――――


翌朝。
夕鈴は目を覚ます。
昨日の感情も少しはすっきりしていた。
起き上がり、顔を洗おうと外に出る。
井戸の水を汲み、顔を洗う。
冷たい水で眠気も綺麗さっぱり消え、布で水を拭い、さて朝食の準備と振り返る。
すると――――

「―――夕鈴。」

昨日、自分が泣いた原因の人がそこに立っていた。

―――何でここに。
こんなに朝早く。
昨日の浩大の時も思ったが、早過ぎではないか。
動くのが。
騙していた庶民の娘なのに、そんなに焦る必要があるのだろうか。
逃げられる、とでも思っているのだろうか。

「―――何の用ですか。」
「―――――夕鈴。」

陛下が一歩近づく。
夕鈴はその分、一歩下がった。
まだ、許したわけじゃない。
するとぴた、と陛下は止まった。
そして口を開く。
慎重に。

「―――夕鈴。お願い、逃げないで。これ以上近づくなと言うなら、近づかないから。」

その言葉に、夕鈴も退くのを止めた。
しかし、気を許したわけではない。
言葉に棘を含ませ、言い放つ。

「―――今更、庶民の家に何の用ですか?もう私は貴方とは関係のない、ただの一庶民です。」
「――僕はそう思っていない。」
「私は、そう思っています。―――借金なら必ずお返しします。浩大にも伝言しましたが、もう私に関わらないで下さい。」
「夕鈴。」
「王宮の事情に振り回されるのは、もう沢山です。―――庶民の朝は忙しいんですから、もう出て行ってくだ…」
「―――夕鈴。」

気が付いたら、目の前に陛下が居た。
いつの間にか距離を詰められていたのか、ハッとした私はすぐに後ろに下がろうとするも、陛下はそれを許してはくれなかった。
手を掴まれ、背中に手を回される。
その状況に顔がカッと赤くなるが、すぐに立て直し、陛下を睨みつける。

「―――離して下さいっ。私はもうバイトは止めたんです!だからっ」
「―――私はそれを許した覚えはない。」

びくっと震える。
狼陛下の声音だった。
浩大も、李順さんも、『狼陛下』は演技ではないという。
じゃあ、この陛下も本当の陛下。
話していることも、演技で言っているのではないと理解した。
でも―――――

「陛下が許さなくても知りませんっ!私の上司は李順さんです…でしたっ!その李順さんは、借金返済の方法は任せると言ってたんですっ!だから、バイトはもう終わりです、離して下さいっ!」
「夕鈴。」
「離してっ…!」
「夕鈴…―――戻って来て。」

その声は小犬陛下だった。
今まで、こちらが本当の陛下だと思っていた声音。
その声はこれまでになく弱弱しくて、私の気勢をそぐには十分だった。

「君の居ない王宮は、まるで光を喪った様だった。君の明るい声が聞きたい。君の笑顔が見たい。―――君が居ないと、僕の世界は成り立たない。」
「そ、そんな事言われても、もう、私、騙されませんからねっ!」

夕鈴がそう言った時、陛下の雰囲気が変わった。
声は小犬なのに、雰囲気だけ狼陛下。
それを少し警戒しながらも、夕鈴は次の陛下の言葉を聞いた。

「―――君は勘違いをしている。」
「な…」
「僕は、君を騙してなんかいない。」
「だからそれは…」

ここまで来ても、まだ言い訳なのだろうか。
もう、今更だ。

「僕が君の前で、偽りの姿を見せたことは一度としてない。」
「―――――――……え……?」

夕鈴は、昨日と同じように頭が真っ白になった。
自分がどこにいるかなど、もう頭の中から出ていった。
―――え?どういうこと?

「君が『狼陛下』を演技と思っていただけで、あれも僕の一面だということは、もう分かっているよね?」
「だから、それが騙しているって…!」
「つまり、君が『演技』だと思っていた『狼陛下』も、本当の僕だ。君の前で、自分を偽った事は無い。」
「―――っ……っ!?」

夕鈴は黎翔の腕の中で頭を抱える。
訳が分からなくなってきた。
私は、陛下に騙されてきたんじゃないの?
本当の陛下を『演技』と偽って………

―――あれ?
でも、陛下はいつも何かあると演技を入れて来て………
実は、それも本当の陛下で……?

――――え?
狼も、小犬も、どっちも陛下ということは…?

後宮の部屋で
下町で
臣下の前で
刺客の前で

…これらで見てきた陛下は、全て偽らざる陛下の姿、ということになる。

「―――君は最初、『狼陛下』を怖がっていたから…だから、実はそれも素の自分って知られたら、逃げられるって思ったんだ。」
「それは…」

それは…最初は確かに怖かった。
人を平伏させる、狼陛下の冷たく低い声。
人を屈服させる、紅い眼光。
人を従わせる何かを醸し出す、冷たいオーラ。
それらの全てが怖かった。
今でも怖くて蒼褪めたり、震えたりするけど…
けど今はそれよりも…ドキドキすることの方が多くて。
狼陛下が“妃”に向ける、甘い演技に…

「だから、君が『演技』って思っているなら…それで君が僕の元から去って行かないなら、そのままで良いと思ったんだ…。でも、それが君をこんなに傷つけるとは思わなかった。―――だから、謝るよ。…本当に、ごめんね。夕鈴。」
「陛下…」

陛下の声が沁み亘る。
それは……どこか懇願するようで。
自分がその声を出させているのだと思うと、胸が締め付けられる。
それは、きっと私が―――陛下に恋をしているから。
だから、騙されていると思った時、酷く裏切られた気持ちになった。
でも、そうじゃないなら。
許して………………―――ん?

「―――陛下?」
「…何?夕鈴…」
「――――――何で、私に去って行って欲しくなかったんですか?」
「―――」

黎翔は凹んだ。
自分がここまで言っているのに…どうやら夕鈴には伝わっていないらしい。
彼女が鈍いのは分かっていたが―――軽く凹む。
自分は“そういう”対象ではないのかと思ってしまう。
でも、今伝えないと、本当に夕鈴は手に入らないかもしれない。
そう思い、黎翔は伝える事にした。
ぎゅっと、夕鈴を抱く腕に力を入れる。

「夕鈴。君に伝えていた言葉は、全て嘘偽りはない。」
「はい…それはさっき聞きましたけど…」
「君が妃として演技している時の私も、偽りの言葉は告げていない。」
「――――…?どういうことですか?」

夕鈴は先ほどとは違う類の疑問に駆られた。
狼陛下は演技ではない事は分かった。小犬陛下も同様に。
最初に陛下に『演技』のまま思いこまされたのだって、元を正せば私が怖がっていたからということも知った。
でも、それと仲良し夫婦演技は別だと思う。
私と陛下は本当の夫婦ではない。
でも、周りにはそう思わせなきゃならない。
だから、演技が必要だった。
王を愛する演技を、妃を愛する演技を。
私のそれは、いつしか本音も混じっていった。
でも、陛下はそうじゃない。
妃を愛しているわけじゃないから、それは演技のはずだ。
だって私は臨時花嫁。偽物の妃だ。
訝しげな表情をしている夕鈴を見て、黎翔は重ねて告げる。

「―――私は君と居る時、一度として自分を偽った事は無い。君が妃として居る時も、下町に居る時も。その時言っている言葉も同様だ。」
「…?……――――っ!!?」

それでも再び疑問符を頭に浮かべていると、やっとその「可能性」に繋がった。

―――演技じゃない?!妃への態度も?!
そんな馬鹿な。
真っ先に夕鈴は否定した。
だって、演技の相手―――つまり、本当は“妃”なんて存在しないのに?
陛下を見上げる。
その瞳は――――真剣そのもの。
嘘を言っているようには見えない。
夕鈴は疑問が浮かびながらも、そこでハタと陛下の腕の中にいることを思い出した。
慌てて腕に力を込め、離れようと陛下の胸元を押す。

「そ、それよりも陛下っ、いい加減離して下さい!」
「やだ。」
「早っ!じゃなくてっ、離しても逃げませんからっ」
「嫌だ。―――我が妃はすぐにどこかに行ってしまうから、こうでもしないと安心できない。」
「むぐっ!!?」

離れようともがいていると、後頭部に手が回り、より一層抱きこまれた。
陛下の胸元に顔を埋める事となる。
すると、陛下の鼓動が伝わって来た。
落ち着いた、一定のリズムで刻む、命の音。
その音を聞いていると、強張っていた体から力が抜ける。
様々な事を一遍に聞かされて混乱していた頭が落ち着いて行く。

―――ああ、私。やっぱり陛下の事が…

例え本当に騙されていたとしても。
弄ばれていたとしても。
振り回されても。
―――それでも、好き。大好き。
気持ちが溢れて来て、涙が出てくる。
昨日までの涙とは違う。
嬉しくて、切なくて…
笑い泣きならこれまでもあったけど、こういう涙は初めて。
こんなにも、胸が温かい気持ちになれる。
夕鈴はぎゅ…と黎翔の胸元を掴む。
黎翔はそれを見た後、後頭部に回していた手で夕鈴の髪を梳く。

「夕鈴――――…戻って来てくれるか?私の傍に。」
「……」

夕鈴は迷った。
騙されていない事は分かった。
陛下や李順さんにそういう意図が無かったと。
狼陛下が演技ではないという事も…まだ実感が湧かないが、そのうち分かるだろう。
まだまだ陛下の言う事は私には難しくて、全てを理解できたわけじゃない。
でも、自分の気持ちがどこにあるかくらいは理解している。

「……―――はい。戻ります。―――貴方の傍に。」

いつか一緒に居られなくなる、その時まで―――
例えここで傍に戻ったとしても、借金が終われば下町に戻る身だ。
これは一生のうちの、ほんの幻の時間…
幸運が見せる甘い夢。
そう思う事にして、夕鈴は黎翔の手を取った。



黎翔は夕鈴の言葉を聞いて安心するとともに、残念な気持ちになる。
やっぱり夕鈴は「傍に」という僕の言葉を“真の意味”では受け取らないようだ。
僕の言う「傍に」とは―――ずっと、一緒に。
それこそ、一生…永遠に。
まだ、夕鈴にはそこまで考えられないのかもしれない。
借金も残っているし、弟君の事もある。
色々な事で頭がいっぱいなのだろう。
―――騙してはいなくとも、言えない事や君には隠しておきたいことはある。
君は薄々気付いているのかもしれないな。
それでも―――夕鈴は戻って来てくれると言った。
僕の傍に。
ならば僕も君の気持ちに応えられるよう、精一杯努力する。
君に居て貰えるように。
君が逃げようと思わなくなるくらいに。
辛抱強く、夕鈴に伝えよう。
君が大事なのだと。
大切なのだと。
君が信じるまで。
僕の―――私の気持ちが伝わるまで。
黎翔は心に誓った。



夕鈴は陛下の手を取ったが、まだ朝食を用意していなかった事を思い出す。
青慎が起きて来て、『李翔さん』が来ていることに驚かれた。
そして、王宮に戻ると言ったら、心配そうな顔をして夕鈴と李翔―――黎翔の顔を見る。
それに『大丈夫だから』と微笑んで、家を出る。



王宮への道を陛下と歩きながら、私はある予感を胸に抱いていた。
―――これから、何かが変わる予感がする。
何が、とかは分からない。
それでも、きっと今までとは違う。
きっと何かが変わる、そんな予感が―――――――――――――



――――――――――――――――――

リクの内容は

『黎翔×夕鈴。狼陛下が演技じゃないとバレる。嘘をつかれたショックで下町に帰るも 諦めきれず陛下が追いかけ迫り、くっつくのでもいいし、最後はもちハッピーエンドで。ばれた理由は何でも良い。基本、狼陛下で。もち小犬も出演可ですよ』

でした。
このお話は、まずどうやって夕鈴が『狼陛下が演技じゃない』と知るか、がキーポイントでした。
なので、最初からサスペンス風に始めちゃうという荒業を…(笑)

ばれた理由は、陛下が自らバラすか、第三者がバラすか…どれでも良いとのことでしたので、うっかり浩大さんにご出演を願いました。そしてそれを肯定する李順さんにも。

まあ…隠密がうっかりとか、普通は有り得ないとか思いながらも、原作でも浩大はうっかり発言があったりするので、有りかなぁ、と思いまして(笑)
でも、人間ですから失敗はつきもの!
頑張れ浩大!
お墓まで何も言わずに、また夕鈴に何も言わせずにだよ!
あと、老師にも←一番の難題



→「波乱の予感―変化の予感おまけ―」へ続く

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*Comment

NoTitle 

ホントだ~(笑)
すべてを知る老師がいた~(*≧m≦*)
浩大が気をつけていても・・・老師が~、ねぇ。(´・ω・`)

陛下にバレないようにしないと・・・浩大の命が。(^_^;)
  • posted by ママ 
  • URL 
  • 2013.12/10 13:47分 
  • [Edit]

ママ様へ 

そうなんですよ~(笑)
あのおしゃべりな老師を何とかしないと…

…おや?浩大?
どうしたんですか?


そんな物陰で…クナイを握ってブツブツ呟いて、老師の方なんて見て…?
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.12/10 14:01分 
  • [Edit]

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