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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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学ぶ事は… 1

皆様お晩です(*´ω`*)

こちらはSNSで9000歩目を踏んで下さったN様からのリクエストです♪

最初はそんなに多くない設定だったはずが、そのうち面白くなって設定が付きに付きまくるという変容を遂げたものです(笑)

ではどうぞ(^O^)/

――――――――――――――――

【現代設定】
【両想い】
【年齢逆転】
【捏造】



ここは白陽国の王都・乾隴。
私、汀 夕鈴は、現在国立白陽大学の大学生。
一応、優秀な学生である特待生として通っている。
最近、家庭教師も始めた。
割と高収入なので、家計は助かっている。
しかし……その生徒が問題なのだ。

「―――というわけで、現在世界の政治体制に関する優劣は、つけ難いという見解があって…」
「――――――ねえ、夕鈴。そんなことより、もっとこっち来てよ。」

私が資料を片手に真剣に話しているのにも関わらず、当の「生徒」は、悪びれずに別の事を言い始める。
私は溜息を吐きつつ、冷静に対応した。

「……はぁ………黎翔君。私たちは今『お勉強』をしているのよ?ちゃんと真面目に聞いて。それに、今は『汀先生』と呼ぶように言われているでしょう?」
「えー…だって、僕たち恋人同士なのに、まだそれらしい事何もしてないんだよ?……僕と会ってくれるのも、ほとんど勉強の時だし……。」

むー、とむくれながらその「生徒」は言う。
黒髪に紅い瞳。
世が世なら、王子様としてあそこに見える王宮に住んでいたかもしれない、やんごとない身分の男の子。
この珀 黎翔君は、国立白陽高校に通う高校生。
今、3年生で学年首席の優秀な生徒だ。
そんな生徒に、何故私が家庭教師をしているのか、今でも疑問に思う。
そして……私とこの子は恋人同士なのだ。
実は。
どうしてこうなったんだろうと、今でも良く分からない。
そう、あれは―――――まだ春。
私が大学3年生になったばかりの、まだ桜の舞う時期だった――――

…*… …*… …*… …*… …*… …*…

『――――珀教授!』
『――おぉ、汀さん。どうしましたか?』
『この間の論文の事なんですが…。ここをどう解釈して良いか分からなくて…』
『…ああ、これですか。これはですね…』

この春ゼミが決まって、私は『白陽国歴史学研究室』のゼミ生となった。
そこの教授の珀先生は、聞くところによると、昔この国の王族だった一族の末裔で、本当はこんな大学に居るような方ではないという。
でも珀先生はそんな周りの人の意見には耳を貸さず、自国の歴史について詳しく研究を進めた。
私は歴史が好きで、昔から丘の上にある王立博物館によく足を運んだ。
将来は、あそこで働きたい。
だからこの研究室に入ったのだ。
もっと歴史を知りたくて。
珀教授が、そのような経歴の持ち主と知ったのは、ゼミ室に入ってからだった。
このゼミは人気が殺到していて、本当に優秀な学生しか入れない、という噂が横行していた。
でも本当は、歴史が好きで好きでたまらない学生かを珀教授が見分けて選んでいるそうだ。
それに夕鈴は選ばれた。
本当に歴史が好きなのだと、珀教授に認められたようで嬉しかった。
珀教授も、自分に歴史の事か関連事項しか聞いて来ない夕鈴が好ましく映るのか、よく面倒を見てくれている。
ゼミ室には、実は1年生の頃から入り浸っていて、そこも評価された点だったのだろう。
そして私は今、3年生になった。
教養科目などは全て修了し、専門科目に専念できると意気込んでいた。
そんなある日だった。

『―――汀さん。…折り入って相談があるんだが。』

珀教授から、申し訳なさそうに言われたのは。
いつもは私が相談することがあっても、教授から相談されることなどなかった。
なので、いつもの恩返しが出来ると、夕鈴は張り切った。

『――何でしょうかっ。私に出来る事なら、何でも相談に乗ります!』
『そう言ってもらえて有難いよ。実は、私の息子の事なんだが…』
『―――――珀教授の、息子さん、ですか?』

夕鈴はきょとん、と首を傾げる。
ご家族の問題だろうか。
教育に悩んでいるとか?
息子さん…おいくつなのかしら?

『そう。その息子なんだが…君の話をしたら、どうやら興味が湧いたようで。是非会ってみたい、と言うんだ。』
『はぁ…』
『今度、私の家に招待するから、良かったら来てくれないかね?』
『―――分かりました。息子さんにお会いすれば宜しいんですね?』
『ああ、助かるよ。――――――何せ、私でも手こずる息子だからね…』
『え?教授、何か仰いましたか?』
『いや、何でもないよ。あぁ、この論文のこの解釈は、君の思ったように解釈して大丈夫だよ。』
『―――本当ですかっ?自身が無かったんですが…良かったですっ!』

そう言って、私と教授は揃ってゼミ室へと向かって行った。



3日後。
約束通り、私は珀教授の邸宅へと招待された。

『――――大きい…。…豪邸?…こんな恰好で私、大丈夫だったのかしら…』

目の前に聳え立つのは、自分の家が何個入るのだろうという豪邸。
車は…何台あるのだろう。
とても、大学教授の住む家だとは思えないほどの豪華さだ。
家の事は聞いていたが…まさかこれほどまでとは。
豪邸の前で突っ立っていると、玄関…大きな門付きの…から…メイドさん?みたいな人がやって来て「汀 夕鈴様ですね?お待ちしておりました。」と、それはそれは丁寧にお辞儀をされ、家の中へと促された。
この人とは初対面よね?と、夕鈴が思ったのも仕方ない。



「―――やあ、汀さん。いらっしゃい。」
「…教授…。」

夕鈴は心の底から安心した。
これまでの人生で有り得ないくらい丁寧な対応をされ、座るのも躊躇する様な客間のソファーで待たされ、今まで飲んだ事無い高級そうなお茶を出され、ホトホト困り果てていた。
何て場違いな場所に来ちゃったんだろう…と首を竦めていたところで、珀教授が入って来た。
見知らぬ場所で、見知った人を見ると、こんなにも安心するものなのだと、夕鈴は感じた。
珀教授が、対面のソファーに座る。

「今日君に来て貰ったのは他でもない。私の息子に会って貰うためだ。」
「はい…。それは存じております。」
「そこでだ。」
「はい?」
「注意事項をいくつか君に教えておこう。」
「―――はい?」
「いいか、よく聞くんだ。―――――まず一つ。息子と会っても、優しくしてはいけない。つけ上がるからな。二つ、息子が何かを嘆いても同情してはならない。これも、つけ上がるからだ。三つ、息子が近づくのを良しとしてはならない。これも、つけ上がるからだ。」
「ええと………息子さんは…その…お調子者…なんですか?」
「いや、そう言う訳ではない。ただ、君の様な人柄の人間にそれをされたら、一発で落ちると思うのでな。」
「―――落ちる?」

どこに?
と思ったのは間違いではないと思う。
だって、今までの会話に「落ちる」要素なんてあっただろうか?

「いいかい?これは君のためだ。―――本当は会わせるべきでは無いと思ったのだが、どこから聞きつけたのか、どうしても会いたい、と言って来てな………はぁ…。」
「…あの、教授…お疲れですか…?」
「ああ。君のせいではないから、君は気にしないでくれ。…そうそう、そういう感じだ。」
「はい?」
「今、君が私に見せた気遣い。そう言うものを、私の息子に見せてはならない。…つけ上がって、どこまでいくか分からない。」
「はぁ…」

良く分からないが、息子さんは相当のお調子者らしい。
あの、言葉巧みに周りの人間を説得する教授らしくない。
…理由が「つけ上がる」しかないなんて。

「えっと…じゃあ、私は冷たくあしらえば良いんですか?」
「そうだね。君の人生上一番の冷たさを私の息子に発揮してくれ。」

そんなの出来るか。
一瞬、夕鈴はそう考えてしまった。
初対面の人間に、冷たさを発揮しろと言われても…
基本、お人好しの夕鈴には難しい注文だった。
教授はそれを見越しての忠告だったのだが…もちろん、夕鈴にそこまで伝わるわけもなく。
何となく嫌な予感はしながらも「では、そろそろ息子が来るだろう。」と、珀教授は腰を上げた。

「え…、教授は同席されないんですか?」

夕鈴は不安げに教授を見上げる。
知らない場所で知らない人間に会うのだ。
傍に知っている人が居て欲しい。

「いや、息子は私と一緒に居るのを好まないのでな。本当は居た方が良いんだが…」
「―――そうですか…。」

夕鈴は不安そうにしながらも、教授がそう言うので仕方ない、と思った。
余り仲が宜しくないのだろうか。
でも、それ以上事情を聞くのは気が引ける。
そう考えていると「では、頼んだよ」と、教授は部屋から去って行ってしまった。
途端に、夕鈴は心細くなる。
教授の言葉が脳裏に浮かぶ。

―――優しくしてはならない。同情してはならない。近づくのを良しとしてはならない。
―――冷たくあしらってくれ。

何だかへんてこな注文だ。
息子と会ってくれと言った割には、冷たくしろ、と言う。
何だか矛盾しているような…

そんな事を考え込んでいると、部屋の扉が「コン コン」と叩かれた。

「―――あ、はい。」
「―――失礼。入るよ。」

そう言って扉を開けて入って来たのは、珀教授と同じ、黒髪に紅い瞳の…男の子。
珀教授を若くした感じの、まだどこか幼い雰囲気があるような…でも目の奥に鋭さがあるような、そんな不思議な印象を感じる男の子だった。
多分この子が、教授の息子さんだろう。
夕鈴が少し呆けていると、その男の子が口を開いた。

「―――貴女が、汀 夕鈴さん?」
「あ、はい。」
「初めまして。珀 黎翔です。今日は僕が無理を言って、申し訳ありませんでした。」
「あ――――いえ。こちらこそ、初めまして。汀 夕鈴と申します。」

夕鈴は慌ててソファーから立ち上がり、お辞儀をした。
敬愛する教授の息子さんだ。
丁寧な対応をしなくては。
すると、目の前の男の子――黎翔君は、少し微笑んで「どうぞ座って下さい」と言った。

「有難うございます。」
「いえ。」

私は元々座っていた場所に座り、黎翔君は先ほど教授が座っていた場所に座った。
メイドさんが入って来て、黎翔君の分のお茶とお菓子を出して来る。
メイドさんが出て行ったら、黎翔君が話しかけてくる。

「―――ねえ、汀さん…って呼ぶのは何だか仰々しいよね。夕鈴さん、って呼んでも良い?」
「―――私は特にこだわりは無いので…貴方の呼びやすい方で良いです。」

そう言うと、黎翔君はきらりと目を光らせ…たような気がした。

「じゃあ……夕鈴。」
「―――ッ?」

夕鈴は驚いた。
まさか、初対面の、しかも年下の子からいきなり呼び捨てにされるとは思わなかったから。
驚いて目を瞠っていると、黎翔君はまるで小犬が耳を垂れているかのようにしゅーん…となり、上目遣いに聞いて来た。

「―――ダメ?」
「…い、いえ…駄目じゃないけど…」

そう言うと、今度はぱあ…!っと垂れ下がったはずの耳がぴん、と張り

「じゃあ、夕鈴でっ!」

と元気に答えた。

「はぁ…」
「僕も、黎翔、って呼び捨てにして良いよ!」
「いやっ、それは……『黎翔君』で良いかしら?」

さすがに、教授の息子さんを呼び捨てには出来ない。
夕鈴がそう言うと、黎翔君は不満そうにしながらも「…分かった」と言った。

「じゃあ、代わりに夕鈴も敬語は無しね。僕の方が年下なんだから、当然でしょ?」
「へ?……はあ…それもそうですね…?」
「ほら、敬語になってる。」
「あ…分かりました、いえ、分かったわ。」

そう言うと満足したのか、黎翔君は「うんっ!!」と答えた。
そこには子供らしい無邪気さを感じた夕鈴だった。
でもお茶を飲む姿はその印象が消え、絵になるほど優雅だった。
ふと夕鈴は疑問に思ったので、聞いてみた。

「えっと…黎翔君はいくつなのかしら?」
「17歳です。」
「そうなのね。…大人っぽいって言われない?お父様にそっくりなのね。」

夕鈴は何げなく言っただけなのだが、空気が一瞬凍りついた。
まだ春なのだが、寒気を覚えた夕鈴は腕を摩った。
頭に「???」と疑問符を浮かべながら。
そうしたら、黎翔君は「…よく言われます。あまり嬉しくないですが。」と言った。

「父とは余り仲が良くないので。今回だって、本当は自力で夕鈴に会おうしたのに…父が妨害してきて…」
「妨害?」

どうしてだろう。
あんなに温和な教授が、まさか自分の息子の妨害をするなんて。
正直信じられない。

「―――まあ、その話は置いておいて。…僕、夕鈴のこと知りたいな。」
「え?」
「今日わざわざ父に頼んで呼んで貰ったのだって、僕が夕鈴に会いたかったからなんだ。」
「はぁ…。そういえば教授は、私の話をしたら興味を持ったって…何に興味を持ったんですか?」
「また敬語になってるよ、夕鈴。……最初に興味を持ったのは、単に父が好印象を持っている人だったから、どんな人かなぁ…って思った事だよ。」
「そうだったんですか…」

敬愛する教授に好印象を持たれていると、その身内の人から言われた夕鈴は、照れくさくなった。
それを家族に話すくらいには、私は教授に気を許されてるのだろうか。

「まあ、それで僕も父に夕鈴の事を聞くようになったんだけど…途中から父は危機感を覚えたのか、話してくれなくなったんだ。」
「へ?危機感?」

どういうことだろう?
一体全体、何がどうしてそんな話に?

「そこで僕は、独自に夕鈴を調査することにしたんだ。」
「―――へ?」

何だか聞き慣れない言葉が聞こえた気がする。
いや、言葉自体は大学で聞き慣れた言葉なのだが、前後の文章とそぐわないものではなかったか。
私を…調査?
何だろう…父親に近づいても大丈夫な人物なのかと、素行調査でもされていたのだろうか。
訝しげな目を向けた夕鈴に、黎翔は勘違いされていることを感じた。

「あ、別に変な意味じゃないよ?ただ、僕が夕鈴のことを知りたかっただけだから。そして、知っていくにつれて話がしたいと思ったんだ。」
「はあ…」

もうそれしか言えない夕鈴。

「でも、父が妨害をし始めて…」
「は?」
「僕が大学に行こうものなら、さり気なく誘導させて父の元へ連れて行かれるよう工作したり、夕鈴の帰りに会おうものなら、自分から話しかけて邪魔したり。ああ、町で声を掛けようとしたら、僕の取り巻きに囲まれたんだったか…」
「…」

夕鈴は黙って聞くしかない。
何せ、自分の中の教授像と一致しないのだ。
だから、黎翔に言われてもよく分からなかった。

「でも僕の執念についに折れたのか、余計ややこしくなる前にと会わせてもらう約束をしたんだ。きっと、人生で初めてだよ。父に何かを要求したのは。」
「はあ…。」

やっぱり、実感が湧かない。
自分にそんなに興味を持たれる何かがあるとは思えない。
なのに、目の前の男の子はそう言う。

「―――そうだ。夕鈴の事を聞く前に、まず夕鈴が僕の事を知った方が良いよね。何か聞きたい事ある?」
「え?…ええ、そうね…じゃあ、黎翔君は何年生なの?」
「都内の高校に通う高校3年生だよ。」
「そうなの…じゃあ、これから受験なのね。」
「あ、僕は大学は行かないよ。」
「え、そうなの?」
「うん。ちょっと前まで海外に留学していて、そこでもう大学は卒業したんだ。」
「―――えっ?…それって、物凄く頭が良いのでは…?」
「一応、高校では首席だよ。」
「……凄いのね…」

夕鈴は素直に感心した。
17歳と聞いた時はそうか、と納得したのに、実際はもう大学を卒業した天才だったとは。
自分よりも頭の良い年下の男の子。
へぇ~…と、別世界の人間の話を聞いているように夕鈴は感じた。

「じゃあ、高校を卒業したらすぐに就職するの?」
「うん。父の親戚の会社を継ぐ事が決まっているんだ。今から仕事も任されたりしているし。」
「―――――もう仕事してるのっ?!」
「うん。そうだけど…どうかした?」
「いや、だって、貴方まだ高校生でしょう?もう仕事してるなんて……大変でしょう…?」

自分だって大学生だが、まだバイトくらいしかしていない。
家計を助けるために他の学生よりは量が多いが、でも会社の仕事を任されるなんて事は、普通有り得ないのではないだろうか。
そういえば、このお家は良い所だったんだっけ。
だからなのかしら。
何だか気の毒になって来た。
体を壊したりしないのかしら。
学業だってあるだろうに。
気遣う眼差しを感じたのか、黎翔はふと柔和な笑顔を見せた。

「―――心配してくれてるの?」
「…だって、まだ高校生なのに。いくら頭が良いからって…」

労働法とかに引っ掛からないのかしら。
夕鈴が真剣に考えていると、黎翔はふと思いついたように言ってきた。

「――――――ねえ、夕鈴。僕に家庭教師として、勉強を教えてくれない?」
「―――え?」
「僕、学校の勉強はもうほとんど覚えちゃったんだ。それに大学は卒業したけど、まだまだ学びたい事もあるし。それが今夕鈴が大学で学んでいる事なんだ。」
「え…、それなら教授に教わった方が…」
「それに、夕鈴のこともっと良く知りたいし。」

頭の良い子に、いきなり家庭教師になってと言われて、咄嗟に頭が回らなかった。
だって、勉強を見てもらうような子ではないだろうに…
なのに、私が今学んでいることを教わりたいそうで。
それなら、夕鈴が実際教わっている、黎翔君の父親に教わった方が早いのではないだろうか。
そう言う夕鈴の言葉を無視して、黎翔君は私のソファーの隣に座って来る。

「な、何?」

いきなり距離が近づいたので、夕鈴は驚いた。
そんな夕鈴の様子が気にならないのか、黎翔はソファーに手を掛け、夕鈴の方を向いて話す。

「僕、夕鈴に教わりたいことがいっぱいあるんだ。大学の勉強もそうだけど…他にも色々とね。」
「…何を?」

夕鈴はこてんと首を傾げる。
大学の勉強以外に、私がこの子に教えられるような事はあったっけ?
いや、無いと思う。
即座に頭の中に否定のツッコミが入る。
百面相をしている夕鈴を、くすりと笑った黎翔は、再度確認した。

「んー、まあ、それは追々分かるよ。とにかく、ね、良い?」
「――――えっと、そう言う事は親御さんとも相談しないと…。今度教授と話してみますね。」
「―――僕が、夕鈴に頼んでるんだ。父は関係ない。それに、また敬語になってるよ。」
「でも……家庭教師と言う事は、こちらの家に来る事になるでしょう?だったら…」
「何だ。気にしてたのはそこ?だったら、僕が夕鈴の家に行くよ。」
「………は?」
「そしたら、家庭教師引き受けてくれる?」
「いや、あの、それは…」

勉強するところもそうだが、他にもお給料の事もあるし…とは、本人の目の前で言っていい事なのだろうか、判断しかねている夕鈴だった。
目が泳いでいる夕鈴が考えていることが伝わったのか、黎翔はこう言った。

「あと、給料は僕が出すよ。これでも仕事してるからね。お金なら大丈夫だよ。」
「へっ!?いや、でも、年下にお金を貰うわけには…っ!」
「雇うのは僕だし、頼んだのも僕だ。それは当然の事でしょ?」

何だか論点がズレてる気がしないでもない。
頭の中がぐるぐるし始めた夕鈴だが、畳みかけるように黎翔は言ってくる。

「ね、次はいつ会えるか分からないなんて、そんなの僕は嫌だよ。だから、引き受けてくれるよね?

そう言って手を握って来る。
ぎょっとした夕鈴が話そうと引っ張るも、抜けない。
慌てて距離を取ろうとするも、元々二人掛けのソファー。
そんなに広くは無いし、そもそも手を握られていてあまり動けなかった。
それに、距離を取った分以上、黎翔に詰め寄られる。

「ちょ、ちょ、ちょっと、離れてっ。こんなに近くなくても話せるでしょうっ?」
「だって、夕鈴が逃げるから。」
「それは、黎翔君が近づいて来るからでっ」
「で、引き受けてくれるの?―――まあ、否とは言わせないけど…」

最後に物騒な言葉を言った黎翔だったが、夕鈴の耳には入らなかった。
今目の前で起きている事態の処理に大忙しである。
今まで男性とこんなにお近づきになった事が無い夕鈴は、パニック状態になっていた。
だから咄嗟にこの状況を打破するのに手っ取り早い、でも後々とんでもない事態になる言葉を口にしてしまう。

「わ、分かったっ、分かりました!引き受けますから…だから離れてっ!」

ぐいぐい黎翔の胸を押す。
いつの間にか距離は縮められ、ソファーの端っこに追い詰められていた。
夕鈴から自分の望む言葉を得られた黎翔は、笑顔だった。
憎らしいほどに。

「うんっ!―――じゃあ、これから宜しくね、夕鈴っ!」
「―――」

そう言って黎翔は離れる。
やり込められた気がしないでもない。
夕鈴はそう思った。
何だかよく分からない内に追い詰められ、無理やり言わされた感が否めない。
私の方が年上なのに。
夕鈴は溜息を吐いた。

―――こうして夕鈴の、苦労が前提の家庭教師生活は始まった。


…*… …*… …*… …*… …*… …*…

――――――――――――――――――

回想が無駄に長い件(笑)

こんな高校3年生が居たら嫌だwww

…とか思いながら書いていたのは、内緒です←


2へ続く


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Author:さき
さきと申します。
「狼陛下の花嫁」の二次小説を書いています。
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