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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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憧れの先生は…!? 1

再び今日は!

こちらはSNSで足跡9999歩目を踏んで下さったR様からのリクエストです♪

ではどうぞ↓

―――――――――――――――――――

【現代パラレル】【黎翔×夕鈴】



「貴女がアシスタントのバイトの者ですか?」
「はい…こちらだと伺ったのですが…」

私、汀 夕鈴はここ白陽市に住む高校生。
この間、親友の明玉から『割の良いバイトがあるんだって!』と言われて紹介された漫画アシスタントのバイト。
その責任者の人に、指定日に行ってと言われて来たのがここ。
出てきたこの男性は、メガネを掛けてて眉間にしわを寄せた、少し神経質そうな人。
応接室みたいなところに通され、座る。
何でだろう…見られてる?

「…若いですね…いくつですか?」
「あ…高校生です。」
「…そんなに若くて…漫画を描いた経験は?」
「あ、はいっ、私、漫画が好きで、よく絵は描くんです。友達と一緒に共同制作して学校祭などでは発表してました。」
「そうですか…完全な素人でないなら結構です。…うちの先生はちょっと気難しいので。経験の貧富を問えないので。」
「はぁ…」

気難しい…
そんなに大変なのかしら…
夕鈴は少しだけ緊張してきた。

「申し遅れました。私は李順と申します。先生の編集をやっております。」
「李順さんですね。分かりました。」

名刺と共に挨拶をされる。
そして、意外な質問をされる。

「ところで、貴女は好きな作家は居るのですか?」
「好きな作家さん…ですか?」

こんな質問が来るとは意外だ。
ここと違う作家さんの名前を挙げたら働かせて貰えないのかもしれない。
そこで夕鈴は気付く。
そもそもここの作家さんの名前を知らない。
バイトの責任者にも聞かされていない。
この李順さんも『先生』としか言っていないので、名前が分からない。


結局夕鈴は正直に言う事にした。

「私、白麗(ハク レイ)先生の作品が好きで…。最近の少女漫画にはない現実的なところとか…。漫画の絵も綺麗ですし…。よくその先生の漫画を参考にさせて描いています。」

夕鈴がそう言うと、李順は少し目を瞠らせる。
そして何か思案した後、口を開く。

「…貴女、こちらの先生の事はご存知ですか?」
「あ…。もしかして、他の先生の作風が混じりそうなバイトでは駄目でしょうか…?」
「いえ…そうではないのですが…」

そこで李順さんは気まずそうに視線を逸らす。
どうしたのだろう…何か変なこと言ったかしら?

「まぁ…いいでしょう。実際にお会いになったら分かります。では、先生の所に案内します。」
「あ、はい。」

そう言って奥の部屋へと通される。
その部屋には『作業場』と書かれており、概観は如何にも仕事部屋であった。
しかしドアが開くと、その光景に口が開いてしまった。
部屋の外からは分からないが、中はこれでもかっ…と言うくらい少女らしい内装であった。
壁紙は薄いピンクで、飾り棚は白くて、上には兎のぬいぐるみが乗っかっていた。
机の上には花が飾られており、入った瞬間、花の香りに包まれる。
しかし…そこに居る人間は、今にも死にそうな形相をしていた。
みんな暗いオーラを出しており「うぅ…5pのベタは終わったか?」とか「このコマ運びで良いのか…?」とかを呻きながら話してる。
これが漫画家の作業場…!と、ごくりと唾を呑み、夕鈴は覚悟を決める。
その時、奥の作業机から声が飛んできた。

「―――何だ、李順。まだ出来てないぞ。」

男性の硬質な声がここまで届く。
顔は机に向かったままなので、黒髪と言う事しか分からない。
その声の響きは冷たく、夕鈴は少し首をすくめる。
李順は慣れているのか怯むことなくすぐに返答する。

「もうとっくに締め切りは過ぎているんですがね…。今日はバイトを連れてきたんですよ。」

そこでその男性は顔を上げる。
夕鈴はその顔を見た瞬間、息を呑む。
物凄い美形だった。
顔の造形はとても良く、女性受けしそうな顔だと思う。
紅い瞳も神秘的で、夕鈴はその瞳に吸い込まれそうな引力を感じる。
しかし二人の話声ですぐに我に返る。

「―――バイト?」
「そうです。―――こちらが汀 夕鈴殿です。漫画は未経験ではなさそうなので、そこそこ使えると思います。」

そこそこってっ!と夕鈴は突っ込みたかったが、まさにその通りなので反論できなかった。

「夕鈴殿。紹介します。―――あれがここの作業場の先生で、私の担当作家である白麗先生です。」

言われた瞬間、頭が真っ白くなる。
え………?白麗先生?
白麗先生は、最近出てきた新人作家ながらも、読み切り漫画が大ブレイクしてすぐに人気漫画家になった。
先ほども李順さんに言ったが、最近の少女漫画にはない現実的なところが妙にリアルで、ヘタなご都合主義が起こらなくて、辛い所もあるが納得できる作品だ。
漫画の絵も綺麗で、細かな表情の変化で登場人物の気持ちが見事に再現されている。
こんな漫画が描けるなんて、どんな人なんだろうと思ってた。
でも………え?

「えっ!!?白麗さんって…男性だったんですかっ?!」

余りの意外さに、夕鈴はそう言う。
それを見た男の人……白麗先生は、一瞬意外そうに目を瞠り、しかしすぐに不機嫌そうにこちらを見る。

「…君は、男性が少女漫画を描いていることに抵抗のある人間か?」

男性は腕組みをして私を見る。
その瞳はこちらを見定めているように見える。
そして言われた事が頭に入って来た夕鈴は、ハッとして質問に答える。

「い、いえ…っ。ただ、意外と言うか何と言うか……驚いた事は驚いたんですけど、別にそれに抵抗は感じないです。むしろ、凄いなって思います。」
「凄い?」
「はいっ!だって、つまり、先生は男性なのに、少女漫画が描けるくらい、女の子の心理に鋭いという事でしょうっ?」
「―――」
「だからっ、凄いな~…って思いますっ!!」

夕鈴は興奮した調子で言う。
憧れの漫画家さんが男性だったのは驚きだったけど、それ以上に、その作家さんと知り合えたことの喜びが一入だった。

男は夕鈴をじ…と見た後、李順に顔を向ける。
李順が目で問うて来たので、それに頷く。
それを見た李順は夕鈴を見ると一つ溜息を吐く。
そして未だ感動に浸っている夕鈴に向き直る。

「それでは、貴女にはここで働いてもらいます。机はそこ。道具はすでに揃っています。一応、描き方の資料は置いておりますが、何か分からない事がありましたらお聞きください。」
「はい。」
「さっきも少し言いましたが、締め切りはとっくに過ぎています。ですので、作業は手早く正確に。使えないと思ったらすぐに切りますからね。」
「は、はいっ。」
「…李順。脅かすな。その子が委縮するだろう。」
「貴方がちゃんと締め切りを守って下さればこんなこと言いませんっ!」
「あ、あの、私精一杯頑張りますので…っ、あの……宜しくお願いしますっ!」

そして夕鈴は深くお辞儀をする。
李順は「ではお願いします。私は出来た分を確認しますので、隣の部屋に居ます。」と言って去って行った。
白麗先生も夕鈴の方を一瞥した後、作業へと戻る。
夕鈴は自分の机に向かって座り、「良しっ!」と意気込んで資料に目を通すことにした。

―――こうして夕鈴の漫画アシスタントのバイトが始まる。


************

「――夕鈴、ここのふきだし頼む。」
「はい。」

あれから一週間が経った。
あの日の翌日、李順さんが

『出来ましたかっ!?出来ましたよねっ!?何ですって、出来てない?――ははっ、とうとう幻聴ですかね。もう締め切りから5日ほど経ってるんですがね……ふふふふふ』

と部屋に入って来た時は、心臓が凍るかと思った。
でもその後、白麗先生が猛スピードで描き終え、その日のうちに何とか終わった。
私はというと、初日から持ち前の粘り強さと根性を発揮したので、役立たずの烙印は押されなかったようだ。
納稿した翌日。
よれよれになった李順さんに呼び出された私は、バイト存続OKの許しが出たので、正式にアシスタントバイトの日々が始まった。

白麗先生は、本名を珀 黎翔と言うらしく、この間内緒で教えて貰った。
他の職場仲間には、どうやら教えてないらしい。
『君にだけ。内緒だよ?』
そう言う彼は、仕事の時の様子とは少し違う雰囲気に見えたけど…気のせいかしら?
今はこんなに真剣な表情で机に向かっているけど…。

―――まあ、気にすることでもないか。

夕鈴は自分の仕事に集中することにした。
今は現在連載中の作品とは違う読み切りものを描いている。
しかし、さきほどから少し手が動いたかと思ったら、止まってこちらを見て、また動くの繰り返しをしている。

…何だろう、見られてる?

まさか。気にし過ぎだろう。
だって、私が先生の方を見たら、先生はいつも机を見てるじゃない。
私が机に向かっている時だけこっちを見ているとか、ないない。
集中よ、集中!
そう意気込んでいた夕鈴だが、徐に黎翔が立ち上がった。

「さて。これで一段落。――夕鈴、ちょっと付き合ってくれる?」
「え?」

立ち上がったかと思ったら、先生は伸びをした。
そして、突然名差しで呼ばれる。
他にも作業している人が居たので、視線が私に集中した。

「どこにですか?」
「それは後のお楽しみ。あ、荷物持って来てね。」
「はぁ…?」

聞き返すも、先生は部屋の入口へと移動しながら、笑顔で手招きするだけだ。
夕鈴は少し逡巡するも、憧れの先生の言う事だし…と、深く考えず荷物を纏め出す。
荷物を持って玄関に行くと、黎翔はそこで待っていた。
一緒に玄関から出ると、途端に黎翔は止まる。

「先生…?」
「しっ」

先生は口に人差し指を当て、静かにするよう指示する。
それに従って静かにしていると、先生は辺りをきょろきょろする。

「…?」
「――あっちから気配がするな。今日は来ないと思ったが……甘かったか。」
「???」

チッと舌打ちする先生。
何かを呟いていたみたいだが、小声で聞こえなかった。
疑問に思って見上げてみると、突然手に温かいものを感じる。
と思ったら、すぐにそれにグイッと引っ張られた。

「え…えっ?」
「行くよ、夕鈴。」
「えっ?行くって…どこにですかっ?」
「内緒。」

あまりにも突然で強引なので、夕鈴は面食らった。
しかし、意外に温かくて大きい黎翔の手に包まれ、男性慣れしてない夕鈴は思わず顔が赤くなる。
男の人って、意外に手が大きいのね…じゃなくてっ!
この状況は何!?
一体先生はどこに行こうとしてるのっ?

「ちょ、先生っ、どこに行くのかくらい、言って下さい!」
「え~、内緒じゃ駄目?」
「駄目ですっ!」

いくらなんでも、知り合ったばかりの男性と見知らぬ場所に行くのは危険だと思う。
夕鈴は踏ん張って留まる。
黎翔は今来た道を見て「…ここまで来たら大丈夫か?」とか何とかわけのわからない事を言った。
そしてこちらを向くと、途端にふにゃぁっと顔を緩める。

「ねぇ、夕鈴。デートしよう。」
「――――――――――――――――は?」

夕鈴は何を言われているのか全く理解できなかった。
今目の前に居る人は、憧れの漫画家先生であって、それ以外の何者でもない人だ。
そんな人から突然「デートしよう」?
デートって…他に意味は無いわよね?
デートって言ったら、あの『デート』よね?
―――――――――――――はぁぁ???

「あ、ああああの、意味が分からないんですけどっ」
「え?デートだよ?男女が一緒に出かけるって言う…」
「そっちじゃありませんっ!何で私が先生と一緒に出かけるんですか、という点です!」

夕鈴は警戒を強める。
いくら憧れの先生とはいえ、相手は男性だ。
いきなり軽々しくお出かけなんて出来ない。
眼差しを強くして黎翔を見つめる。
すると先生はふっと笑う。

「ああ、何も説明しないでごめんね?デートと言っても、これは漫画の参考にするやつなんだ。」
「…え?」
「今度新しく連載する漫画で、主人公の男の子が女の子をデートに誘うんだけど…僕、デートって一度もした事無いんだよね。」
「えっっ?!先生が、一度も!?」

意外だった。
あんなに少女漫画で恋愛モノを描いている先生なら、きっと経験が豊富なんだと思っていたから。

「僕自身、漫画が好きだからね。他の人が描いたものを参考にさせて貰ってた。――でも、やっぱり僕自身がこういう事は体験しないとね。」
「なるほど…」
「そこで、君に手伝ってもらおうかと思ってね。」
「―――でも、何で私なんですか?先生なら、女性の知り合いは…」
「僕は君が良いんだ。」

にこりと笑いながら先生はそう言った。
何でだろう?
先生ほど美形の方なら、きっと引く手数多だろうに…
何で『私』と…あ!

「分かりました!」
「そう?じゃあ…」
「他に頼める方がいらっしゃらないんですね!」
「…え?」
「お仕事の事ですし、もしかしたら関係者以外にお話の事がバレてしまう可能性もありますもんね。その点、アシスタントの私なら、バレても問題はありませんものね!」

にっこり満面の笑顔で夕鈴は言う。
それは、謎は全て解けた!と言わんばかりの笑顔であった。
黎翔はがくりと肩を落としそうになったが、それでも持ち直して夕鈴に伝える。

「―――うん、仕事だからね…。――でも、うんっっと楽しもうね!これは『デート』だからねっ!」
「はい!分かりました!お仕事頑張ります!」
「――うん!」

―――予定とは違う反応だったけど…ま、いっか。
やっぱり夕鈴は面白い。
黎翔はにやりと笑う。心の中で。
夕鈴はその様子にはこれっぽっちも気付かない。

そして二人は駅前通りへと歩き出す。


――――――――――――――――――――――――

…え?
先生の名前が安直?

いえ、これで良いんです。
黎翔さんに任せたら、もっと変なのになりますから(笑)


2へ続く

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