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雪の箱庭

「狼陛下の花嫁」二次小説を書いています。SNSで書いたものを掲載します。

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黒夢 2

続きです♪

夕鈴の花嫁バイトが終わりを告げた。
夕鈴は皆に別れを告げ、下町へと帰って行く―――

―――――――――――――――――――――――――――

下町―――
自宅に帰って来た夕鈴は、未だ現実味が感じられていなかった。
弟の青慎には帰る事を手紙で伝えていたので、夕鈴が自宅に着いた時『お帰りなさい、姉さん。』と言ってくれた。でも、私の顔を見るなり『――疲れてる?少し休んだら?』と気を遣わせてしまった。
そんなに疲れている顔、してたかしら…
夕鈴は自室の寝台に腰を掛けながら息を吐き、自分の顔を触る。

「――気が抜けちゃったのかしらね…」

緊張の連続だった王宮暮らし。
『冷酷非情の狼陛下』と呼ばれる尊き方の、妃役という大役。
様々な視線を浴びせられる立場に居たことで、私自身も気付かないくらい疲れていたのかもしれない。
それが、下町に帰って来た実感をしたことで、一気に精根尽き果てたのかもしれない。

夕鈴が暫くぼーっとしていたら、窓からコツンッという音が聞こえた。
そのサインは聞き慣れていたものだったので夕鈴はすぐに立ち上がり、青慎に言って家の裏口に向かった。

「―――よっ。挨拶にと思って。」
「――浩大…」

そこにはやっぱり、今ではお馴染みになった隠密が居た。
最近姿を見せていなかったから、もう会えないかと思っていたが、最後くらいは顔を見せに来たようだ。

「しっかし、意外だな~。あの陛下がお妃ちゃんを手放すなんてサー」
「…バイトが終わったんだもの。手放すも何も、最初から私は……偽物だし。」

夕鈴はぎゅっと脇の裾を掴む。
気が抜けていたところに気にしていることを言われ、正直涙が出てきそうだった。

「んー?や、そーだけどさ。あの人にはそんなのカンケーネーじゃん?」
「…関係無いって…」

関係大有りだろう。
あの人は王、私は庶民。
元々、交わることの無かった人生だ。
元の歯車に戻っただけ。
ただそれだけのこと。
――それでも、それは痛む胸を癒してくれはしない。

「ま、そういう訳で。―――またな、お妃ちゃんっ」

浩大はそう言い残して、姿を消した。

「またな…って。もう会わないじゃない…」

陛下の隠密とただの庶民。
彼とも、再び会う事など無いだろう。
それに―――

「私、もう、お妃じゃないわ…」

夕鈴の声は、庭の木々の葉擦れの音に掻き消された。



「――姉さん?」

浩大が去った後、一人佇んでいた夕鈴に、遠慮がちに青慎は話しかける。
その声に、随分長くぼーっとしていた事に気が付いた夕鈴は、慌てて青慎に振り返る。

「な、何?どうしたの、青慎。」
「実は…―――」
「―――は?」

夕鈴は弟の口が紡いだ話を、最初は理解できなかった。
呼吸分にして5回分経った頃、ようやく頭に伝わった。
それは、感傷的な気分を吹き飛ばすには十分で。

「な……っ、何ですってーーーっ!!!?」

夕鈴の叫びが、辺りに響き渡った。


***************

「―――几家が?」
「そう。―――お妃ちゃん、王宮から帰るって弟君には連絡を入れてたから、下町じゃもうお妃ちゃんが戻って来る事は知られてたんだよね。そしたら、几家のおばば様が、心置きなく嫁に貰える、って準備に張り切ってたっけ。」
「―――」

夕鈴が下町に帰った当日の夜。
黎翔は夕鈴を下町まで護衛するよう、浩大に言っていた。
浩大には一応、下町の様子を一通り見てくるよう指示していた。
その浩大が帰って来て報告してきた内容が

『どうやら、几家の息子とお妃ちゃんの縁談話が持ち上がっているらしい。』

とのこと。
黎翔は、夕鈴が下町に帰る心の準備は出来ていたものの、夕鈴が他の誰かのものになることまでは、想像出来なかった。
今でも、信じられないくらいだ。
呆然と聞いてると、浩大は酒瓶の蓋を開けて飲み始めた。

「お妃ちゃんはめっちゃ嫌がってるけどな~…。でも、几家の女主人の様子を見る限り、押しが強そうだな。まだお妃ちゃんとは会って無いみたいだけど、ありゃあ、そのうち押し切られるネ。」
「―――」

その言葉に、黎翔は几家の女主人の性格を思い出していた。
確かに以前、あの女主人が『孫の嫁に』と言っていた時も夕鈴は押し切られそうになっていた。
あの時は自分が取り成した(弱みを突いたとも言うが)。
夕鈴の上司という事で取り下げる事が出来たが、今回は…
夕鈴のバイトは終わった。
それで私と夕鈴の関係が終わったとは思いたくないが、几家の人間がどう考えているのかは分からない。
それに…夕鈴も。
もしかしたら、絆されてしまうのではないか。
金貸し君との結婚を、受けてしまうのではないか。

――自分の事など、そのうち忘れてしまうのではないか。
――そして自分とは関係ない所で、幸せになっていくのか。
――あの笑顔が、他の男のものになるのか。

黎翔は自分の心の中が暗い感情で満ちて来るのを、止める事が出来なかった。


*****************

翌日、下町。
昼食の買い出しをしていた夕鈴を、呼び止める声があった。

「あ、ゆーりん!」

そう言って夕鈴を呼んだのは、親友の明玉だった。
明玉は夕鈴に駆け寄ると、夕鈴の手を取ってはしゃぎだした。

「夕鈴っ!あんたもとうとう観念したのね!」
「は―――?何のこと…」
「とぼけないでよ!几鍔さんと結婚するんでしょっ?」
「は――」

夕鈴は目を瞠った。
私と几鍔との結婚話があるという話は、昨日青慎に聞いた。
でも、私は了承していない。
…というか。

「何であんたも知ってるのっ?」
「えー?もう下町ではその話で持ちきりよー?違うのー?」
「違うっ!」
「でも、おばば様はもう準備し始めてるって聞くわよ?」
「はっ!?」

何だそれは。初耳だ。
これは―――思った以上に深刻じゃないのっ!!
このままじゃ、几鍔と結婚させられちゃう!

「じょ、冗談じゃないわっ!私ちょっと几鍔の所に行って来る!」

明玉にそう言って夕鈴は駆け出した。
ちょっと走ったところで、自分が買い物の途中だった事を思い出した。
とりあえず、もう必要なものは買ったので、これらの荷物を家に置いてから、几鍔の所に乗り込もうと夕鈴は考えたのであった。



「――青慎っ、居るっ?」
「――――――姉さん?どうしたの、そんなに急いで…」

夕鈴が家に着き、バタバタと急いで台所に入りながらそう言うと、青慎がやって来た。
夕鈴は買ってきた荷物を卓の上に置き、新鮮なものとそうでない物を分ける。

「私これから几鍔の所に行ってくるから、青慎は食料の後始末してくれるっ?」
「良いけど…何で几鍔さんの所に行くの?」
「もしかしたら、このまま几鍔と結婚させられちゃうかもしれないのよ!冗談じゃないわ!」
「え…」
「縁談の話があるのは聞いてたけど、まさかおばば様が準備してるなんて…!そんなの私、聞いてないっ!いくらなんでもやり過ぎよっ!抗議して来るわ!」
「あ…えっと…」

青慎は何を言えば良いのか分からない。
姉の気持ちも分かるけど、おばば様の押しが強いのはこの下町の誰もが知っている。
抗議をしたところで、聞き入れてくれるのだろうか…
そう思っていると、玄関の方から人が入って来る音がした。

「――よう。居るか?」
「―――――――几鍔っ!」
「几鍔さんっ!」

入って来た件の人物に、夕鈴と青慎は同時に声をあげる。
そして目に入った瞬間、夕鈴は叫んだ。

「几鍔っ!!あんたねぇ…!」
「待て。――…ちょっと来い。ここじゃ話しづらい」

几鍔は親指で玄関を差し、夕鈴に外に行く事を促す。
そして几鍔は出て行った。
夕鈴も弟の前じゃ気まずいと思い、青慎に荷物を頼んで、几鍔に次いで外に出る。
青慎は心配そうな顔をしながらも「ここは任せて」と姉を送り出した。


*************

「――――さて。どういう事か説明して貰いましょうか?」

とりあえず家の庭へと場所を移した夕鈴と几鍔。
ここなら、人目を気にすることは無い。
心置きなく、口論が出来るというものだ。

「…まずは確認だな。お前はどこまで知っているんだ?」
「は?」
「―――俺とお前の、縁談の話があることは、もう知ってるんだろ?」
「な…っ」

夕鈴はその話を張本人の口から聞いた事で、再度ブチ切れる。

「――几鍔っ!私はあんたなんかと結婚しないわよっ!」

金貸しの息子と結婚だなんて、冗談じゃないわ!
お先真っ暗よ!
夕鈴は几鍔に叫ぶが、対する几鍔は頭をぽりぽりと掻いている。

「あ~…――お前が嫌なのは分かる。だけど…お前、どーすんだ?」
「何がよっ!」
「どっか嫁に行く当てはあるのか、って聞いてんだよ」
「はぁっ!?そんなの、あんたに関係ないじゃないっ!」

いくら嫁ぎ遅れと言われている自分だからとはいえ、几鍔にまで心配される筋合いは無い。

「―――はぁ…。ばーさんが本気でお前を嫁に迎え入れる準備をしているのは…知ってるか?」
「そ、それよっ!さっき明玉に聞いたのよっ、何でそんなことになってるのっ!?」
「俺もついさっき知ったんだが…あのばーさんを説得させるのは楽じゃないぞ。俺もどういうことだって聞いたんだが、聞きゃしない」
「あ、あんただってこんなの嫌でしょっ!?だったら何とか説得しなさいよ!」

あんたあの人の孫でしょ?!と夕鈴は詰め寄る。
しかし几鍔はふと真剣な表情になり、頭を掻いていた手を下ろし、夕鈴を見下ろす。

「な、何よ…」
「―――お前、本当に嫌か?」
「え…」

夕鈴は眉を寄せる。
何を言い出すのだこの男は。
そんなの…嫌に決まってるだろうに。
というか、こいつだって私じゃ嫌だろうに。
今更何を聞くのかしら…

「俺は…別にお前でも良いと思ってる」
「―――は?」
「別にお前と良い仲になりてぇとか、そんなこと思ってるんじゃねぇよ。…でもお前は、そんじょそこらの女よりも肝っ玉が太ぇし、裏表なく人の事散々貶すし…」
「あんた喧嘩売ってんのっ!!?」
「違ぇよ。……お前となら、楽だなと思ったんだ」
「…は…?」

夕鈴は訳が分からなくなった。
―――え?何?こいつは何を言ってるの?
お前でも良い?
お前となら楽?
今まで散々人の事貶しておいて?
これまで几鍔に自分を肯定された事のない夕鈴は、几鍔が言っている事の意味が理解できない。
その様子に、几鍔は再び頭を掻き始める。

「あ~~~っ!これじゃ分からねぇか…。つまりだな…―――お前となら、結婚しても良いと思ってる」
「――――――…っ……はっ!?」

結婚という言葉にされてようやくその意味を理解出来た。
しかし夕鈴は、未だに不信感が拭えない。
小さい頃は確かに一緒に遊んでいたが、今となっては犬猿の仲になった自分と几鍔。
そんな相手から「結婚しても良い」と言われても、そう簡単に納得出来ない。

「お前を女として見てるかって言われると微妙だけどな…お前と一緒に居る時は、楽に感じる時が多い。そんじょそこらの女よりも肝っ玉が太いから、うちのばーさん相手にも怯まないし。裏表が無いから、顔色を窺う必要が無いしな」
「はっ……?!」

これは…褒められているのだろうか?
こいつの言葉は、すでにどの言葉も貶し言葉にしか聞こえない。
それでも…何となく肯定的な意味で言っているのが伝わって来る。
―――少しは好意的に見られてたのか…?
だからと言って、こいつとの結婚に賛成した訳では無いっ!

「―――あんたがどう思おうが、私は金貸しの息子と結婚なんて、死んでも御免だわっ!それに、あんただって別に私の事好きじゃないんでしょうっ!?」
「…ああ…まあな…」
「だったら―――っ!?」

夕鈴が再び結婚なんてしない!と叫ぼうとしたら、突然几鍔に抱きしめられた。
最初は何が起こったか分からなかった夕鈴だが、すぐに状況に気付き、暴れ始める。

「―――なんっ!?ちょ、離…」
「―――好きでもない相手に、こんな事は出来ねーよ」

そう言う几鍔は、いつになく真剣な声音を出している。

「―――…几、鍔…?」

その声に、夕鈴がおずおずと几鍔の顔を見ようとした―――その時

「――――その手を離せ」

冷たい声が夕鈴の耳に届いた。


―――――――――――――――――――――――――――

「もう妃じゃない」
この言葉、意外と好きです。
…というか好き、というよりも、切なくなって、それが好き…というニュアンスですかね…

そしてアニキ!
アニキはやっぱり男前!
あ、私はもちろん、陛下も好きですよ?←

3へ続く

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*Comment

NoTitle 

兄貴、ちょいと上から目線になってませんか(笑)

「お前でもいい」じゃなくて「お前がいい」でしょう?(。-∀-)

全く男ってやつあ・・・・。
ライバルが現れないと決心がつかないんだからね~(*≧m≦*)
陛下~~~登場!♪((O(〃⌒∇⌒〃)O))♪ドキドキ
  • posted by ママ 
  • URL 
  • 2013.12/18 14:18分 
  • [Edit]

ママ様へ 

ほんっと、素直になれない性分が…(笑)
上から目線すぎて、私はその顎にアッパーをかけてやりたくなりますwww←おい

几鍔が「お前がイイ」…

天変地異の前触れ…?(((゜Д゜;)))ブルブルブル←失礼
  • posted by さき 
  • URL 
  • 2013.12/18 14:41分 
  • [Edit]

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